ドル円がまたしても予想どおりの105円台に突入し、今度は105円自体も割り込みかねない下押しの勢いとなっています。
東京タイムからすでに105円台への押し込みをはかっていたドル円でしたが、極めつけは国会で所信表明を行った日銀総裁が「現時点では私も含め政策委員は19年度ごろ2%程度に達するとみている」とし、「当然のことながら、出口というものをそのころ検討し、議論しているということは間違いない」と語ったことからドル円は一気に円高に走り出し、とうとう前回の105.550円を下抜ける勢いとなってしまいました。
黒田総裁はわざと出口の期日を口にしたのか?
すでに2%達成を口にしてから5年の歳月が経過しているわけですから、なんとか恰好をつけたいと思うのも判りますが、市場は出口という部分に異常に反応し、ドル円は黒田発言で円高逆戻りの状況に陥っています。
105円台には生保などの機関投資家の買い需要も見込まれていますが、何分年度末に近い資金枯渇状態における円高ですから、果たしてどこまでPKO軍団がドル円を買い支えるかもかなり疑問な状況です。
先進各国の中央銀行が挙って金融引締めに動いている中にあって、日銀の挙動が大きく注目されているのに、迂闊に期日付きで出口戦略実施のティーザーともいえる内容を安易に口走ってしまった黒田総裁は明らかにその発言が失敗であったのではないかと思います。
しかし、逆に考えれば無理やり任期を延長して総裁を務めることに嫌気した発言なのかもしれず、その真意が気になるところです。
いずれにしたも黒田発言の報道をきっかけにしていとも簡単に1円以上ドル円は円高に進んでおり、しかも財務大臣も米国との向き合い上為替レートに関してはなにも言えない状態です。
このままいけば市場による為替介入要求相場にもなりかねず、ここからの動きにかなり注意が必要になってきています。
気になるのは週明け以降の相場
105円台前半までつけたことで一旦相場は落ち着きを見せていますが、106円台は一段と遠くなってしまい、すでに107円ジャストのオプションも何も関係ない存在になりつつあります。
テクニカル的には105円を明確に割り込んだ場合には2016年トランプが大統領選挙に勝利した直後の101.182円まで逆戻りする可能性も高まり、警戒が必要です。
ドル円日足チャートを見ても判りますが、2016年11月のトランプ勝利以降の相場のいきなりの上昇はあれよあれよという間に年末に118.665円をつけるまで駆け上がってしまいましたので、104円台に多少のサポートラインは存在するというものの、101円台まではかなりすかすかの状態となります。
テクニカル的には無理やりポイントを作ることも可能ではありますが、アルゴリズムによるオーバーシュート気味の相場では101円台まで下落してしまう可能性は否定できません。
来週は雇用統計の発表もありますが、イエレン退場以降どれだけ雇用統計の結果が注目されるのかもよくわからなくなってきていますし、トランプの保護主義発言が連日市場を賑わせているなかでは、ドル安をストップさせる要素はほとんどなさそうな状態で、一段の円高を想定しておいたほうがよさそうな状況になってきています。
ドル円相場はあまりにも一方的にポジションが偏ってショートになると一時的に巻き戻しのショートカバーが頻繁に出やすくなりますから一気に下落するよりはジグザグに上下振幅しながら結果的に円高という動きになりやすくなることが予想されますが、どうもまだまだ下がりそうな嫌な雰囲気になっていることは事実です。
週明け金曜日は東京市場でもメジャーSQが控えていますから、日経平均は先物主導でさらに下押しするリスクもあり、ドル円にとっては下落の材料がそろいやすくなりそうです。しっかりと十分に引き付ける形で戻り売りを意識したい週となるのではないでしょうか。
(この記事を書いた人:今市太郎)