先週金曜日から下げ始め週明けにいきなりフラッシュクラッシュをかましてきた米国NYダウでしたが、やはり暴落は終焉したわけではなく、昨晩も大きな下落を示現することになりました。
低金利で企業業績も悪くなく、異常な高揚感に満ちた独特の雰囲気も存在しないので、今の状況は決してバブルではないという意見も市場では見られますが、3つの国の中央銀行が人工的に作り出してきた過剰流動性相場が金融引き締めという動きに転じる過程で大きな巻き戻しにあっていることはどうやら間違いないようです。
バブル相場に遅れまいとして、年明けからさらにNYダウを買い上げた連中によるメルトアップと呼ばれる不思議な相場状況もいよいよ終焉を迎える時期にさしかかってきているようです。
VIXの逆張りなどというリスク無視の投資が適温相場を崩壊
VIX指数というのはご存知のとおり、米国のシカゴオプション(CBOE)が算出している指数で恐怖指数として知られているもので、オプションの売買度合いを示しているともいえます。
相場が安定しているときはボラティリティが低くなり、逆に不安定な時には値が大きく変動することからボラティリティは高くなるわけですが、VIXは米国S6P500のボラティリティを示すもので、CBOEが出している指数であるだけに当然これを利用した商品も存在するわけで、VIXが急変動しないことに賭ける上場投資商品なども世の中には存在するのです。
本来ならボラの大きくなるときに保険として売買しておくと大きく機能するオプションがVIXなのに長く続いた米国のじり高相場でVIX指数が極端に低くなっていたことから、今年も中間選挙まではこの状況が続くと安易に想定した投機筋や個人投資家がこうしたVIX逆張り商品を購入して今回こっぴどくやられてしまったのが実情です。
このVIXによる損失の爪痕はまだまだ株の売却で穴埋めしなくてはならなくなりそうで、これが終わるまではそう簡単に株価も戻さないことが予想されます。
メディアの後付相場解説はほとんど現実から乖離か
今回の暴落を巡っては様々な推測的原因が持ち出されてきていますが、どうも金利が上昇したから暴落したという話には無理がありますし、昨晩(今朝)の暴落も金利上昇を警戒とした報道が出回っているのには違和感が感じられます。
まだ3%にも満たない状況でそれだけが起因しているとは到底思えないわけで、むしろ値を戻したところで株を売り払いたい層が多数残っおり、相変わらず株価の流動性が枯渇していることが窺えます。
これまでのバブル崩壊と違って、今回の中央銀行バブルは資本市場全方位のバブル崩壊につながるわけですから、その崩壊過程もこれまでのように瞬間芸のように下落して戻す形にはならない可能性もあり、予断は禁物な状況です。
しかし為替の世界で見ますと、もっと驚かされるのはこれだけの大さわぎが連日起きているというのにドル円は108円を割るそぶりすら見せないことで、債券金利上昇にも連動しないが下押しもしないというかなりわかりにくい状況に陥っていることです。
今後まったく債券金利に連動しないまま推移するのか、いきなりどこかで正気にもどって上げ始めるのかが非常に気になりますが、米国の株式市場が相当傷んだ場合、海外資産を売ってドルを引き上げる動きがでることもあり、市場の動向次第では一時的にドル高が進むという不思議な事態が示現することも考えておく必要がありそうです。
ユーロドルでは資金避難という視点ならユーロがもっと買われてしかるべきですが、そういう動きになっておらず、今回の暴落相場では為替がもっともはっきりしない動きを継続中です。
方向感がよくわからないときには一旦休んで相場の先行きを見届けてから再エントリーするなど独自の工夫が求められる時間帯にさしかかっているようにも見えます。取引は十分にお気をつけいただきたいと思います。
(この記事を書いた人:今市太郎)