今週は実にイベントや材料の多い週となりましたが、結果として週の取引が終わってみると非常に変化がでてしまったのが「米10年債金利」の上昇とそれを嫌気すると思われる米株市場の下落ということになってしまいました。
ゴルディロックス相場を頑なに守り続けてきたともいえるバブルの守護神イエレンが明日をもって退任することとなり、5日からはいよいよFRB議長史上もっとも影の薄い存在といわれる、パウエル体制下で政策金利のコントロールがはじまりますが、一時代が終焉したと同時にこれまでの中央銀行主導のバブル相場にも終焉の波が打ち寄せようとしている可能性も高まっています。
金利?そんなの関係ねえ~わけがない市場構造
今週どんどん上昇した米10年債利回りですが、いよいよ2.8%台に乗せてきており、もはや3%は目と鼻の先になってきています。
金利の上昇が市場にもたらす影響については毎回このコラムでも書いていますので重複は避けますが、債券相場の下落は売りが売りを呼ぶ可能性もあり、さらに金利が上昇するのは時間の問題とみる向きも多くなってきています。
なにより米株はいよいよ金利上昇を嫌気してきており、2日の終値は一昨日とは一転して665.75ドル安で25520ドルと1月の最高値26835ドルから既に1300ドル以上下落したことになり、週明け以降この動きがさらに顕在化するかどうかが注目されることになりそうです。
為替の世界ではほとんどこの米10年債の金利の上昇に反応しなかったドル円もさすがに下落はとまり雇用統計の結果なども後押しして110円台に乗せて週の取引を終えています。
債券金利とドル円はまだ完全にシンクロした動きにはなっていませんが、株価の大幅下落が響けば今度はまたドル安円高に転換することも十分に考えられ、注意が必要になります。
今回の下落がそのまま暴落につながるのかどうかは不明ですが、調整が入るとすればNYダウベースなら20パーセントダウンぐらいはあっても決しておかしい話しではありませんから、ここからは思い込みをやめて相場の変化をしっかりとチェックしていく姿勢が必要になりそうです。
為替ではユーロにより一層資金が逃げる可能性も
為替市場にフォーカスしてみますと、ユーロへの資金の逃避というのはここからもさらに続く可能性は高く、このドル安の進行がドル円の上昇を妨げるリスクは十分にありそうです。
米債の下落は債券市場からの資金逃避も加速させることから意外な速さでドル安が加速するリスクも考えておかなくてはならない状況です。
足元の相場は2008年のリーマンショックから実に9年以上続いた上げ相場の最終局面ですから、エリオット波動でいえばどう考えても第5波に入っており、これがまだ延々と延命するのかあっけなく春が来る前に頓挫してお仕舞いになるのかはまだ誰にも分らないのが正直なところです。
しかし暴落というのは売りが売りを呼んで流動性が枯渇しパニック状態を起こした時に想像以上にオーバーシュート気味に展開して思わぬところまで相場を下落させかねないだけに、下落の途上をいい押し目とばかり買い向かうと飛んでもない損失を被る危険性があることだけは常に意識しておかなくてはなりません。
皆さんご存知のとおり、相場は下落のほうが上昇よりも数段早いスピードで訪れることになりますので、下落相場にショートで乗れれば爆発的な利益を短期間に得ることが可能になります。
しかしどこが相場のピークでいつ下落するのかを見極めるのは至難の業になりますから、熱望しても下落相場に乗るのは大変です。せめて下落に巻き込まれないようにするのが個人投資家としては最良の方法になりますから、ドル円なら迂闊にロングは持たずに様子を見るといった警戒姿勢だけはしっかり持っておく必要がありそうです。
(この記事を書いた人:今市太郎)