10月にもこのコラムで店頭FX業者のレバレッジが金融庁から10倍にダウンすることが決められそうだという第一報をお知らせしましたが、正式実施時期は未定ながらどうも来年この10倍レバレッジ規制は現実のものとなってしまいそうで、来年のFX相場には大きな変化が訪れることになりそうです。
個人投資家のドル円取引は大きく減少か
既にご存知の方も多いと思いますが、国内の個人投資家のFX取引というのは世界的なFX取引の中でも53%以上というかなり大きなウエイトを占めており、しかも国内の個人投資家の実に8割以上がドル円の売買をしているとされていることから、こうした動きもドル円市場を動かすという点では決して馬鹿にできない存在に成長しつつあります。
メディアではミセスワタナベなどとも呼ばれる個人投資家の売買動向はとくにドル円では注目に値するものがあり、逆張り大好きな日本人投資家がいるがためにドル円は比較的レンジ取引になりやすいともいわれるほど相場には影響を与えているといえるのです。
しかしこの動きが10倍のレバレッジになるとこれまでどおりの取引量を確保するためには2.5倍の証拠金を投入する必要があるわけですから、おのずと取引量が減少することは容易に想像がつく話となります。
ドル円相場のレベルが同じだと仮定した場合でもざっと6割近い取引が減少する可能性があることは見逃すことのできない問題で、ドル円相場にも少なからず影響をもたらすことは間違いなさそうです。
シストレ、ループイフダンの仕組み売買は全滅か
また、国内では非常に参入業者が多い、シストレとループイフダンといった仕組み売買も証拠金のレバレッジが下がれば当然利用しにくくなり、とくに複数の売買を設定するループイフダンやトラリピのような取引はボリュームが確実に減少することは免れなくなるものと思われます。
さらに自動売買を行うシストレ系のサービスはドローダウンの大きさに証拠金規模が耐えられなくなることから利用者は激減することが予想されます。
こうなると多くの店頭FX業者はドル円の取引ボリュームが利益を支えていただけに、金融庁が気にしているようなリスクとは別の意味で経営が立ち行かなくなることも考えられ、業界の粛清がかなり進む可能性でてきているといえます。
それだけに今後店頭FX業者が仮想通貨取引の領域により積極的に参入することも考えられ、国内のFX市場はそのままビットコインなどをはじめとする仮想通貨市場にシフトしていしまう不思議なリスクが高まることになりそうです。
ただ仮想通貨はレバレッジをかけて売買する市場ではない
FXの取引を長年おこなってきたものにとってはビットコインFXのような売買は非常に親和性が高く、ほどんと既存のFXと同じだという印象を持つことになりますが、足元ではFX市場にはありえないようなボラティリティが発生していますから、まず25倍などというレバレッジはまさにハイレバであり、およそレバレッジをかけて売買するような市場ではないことだけは事前にしっかり理解しておく必要があります。
ドル円の調子でビットコインの市場になだれ込んだ場合、あっという間に証拠金を完全に溶かし、しかも証拠金不足の状況で追徴されるリスクがあることはそうとうしっかり認識しておくことが重要になりそうです。
仕組みは似ていますが、FXのレバレッジに規制が入るからビットコインと短絡的にシフトするととんでもないことになりかねない点だけは厳重な注意が必要です。
今回の店頭FX業者へのレバ規制でメディアが報じていないのが取引所FXのレバがどうなるかの問題です。これが店頭FX業者だけに適用されるというのはかなり不条理ですが、そうなると取引所FXも今後検討しなくてはならない事態が発生することも考えられます。
なんとも気の重い話しですが、どうもこの話にはもはや逃げ場はないようです。