今週からはもう相場も動きませんので2017年市場を振り返ってみたいと思います。まずはじめに今年の相場で注目したいのが「市場相関性の完全崩壊」です。
長年FX市場を見ていますと、一応FXの特定通貨ペアと相関関係、もしくは逆相関関係のある相場というものは比較的明確に理解できたものですが、今年の相場に関しては中央銀行が過剰な緩和措置をとりはじめてから最高にして最大の相関性崩壊が起きたのではないかと強く感じさせられました。
なぜ相関性は崩れるのか?
これまでの相場では市場に一定のロジックが働いてきたことから各資本市場の相関性や逆相関性というものは比較的安定的に保たれてきたといえます。
ごく簡単な話では株式市場がリスクオンで活況を呈する市場では、債券からも資金が株に投入されることから債券は売られ債券金利も上昇するといった話は、ある意味非常に当たり前のこととして起きていたといえます。
しかし足元の米国市場は、債券も買われるが、株式市場はそれ以上に買われるというパラレルな動きになっており、同じバブルでもこれまでのものとはかなり様相の異なる展開が続いているのです。
各資本市場はそれぞれの相場の需給で勝手に動き始めているという状況がとくに顕著になった年だと言えます。しかしこの相関性は何故崩れるのでしょうか?
理由は明確にわかっているわけではありませんが、中央銀行が仕掛ける過度な金融緩和と金利の異常なほどの低下傾向の維持がこうした相場の示現にかなり寄与しているものと思われます。
長短金利差減少による金融機関・機関投資家の動きが起因
中央技能による過度な緩和措置によって登場したのが、金融機関や機関投資家による異常とも思えるイールドハンティングです。債券の長短金利のスプレッドの差があるから食べていかれる銀行はここ数年の長短金利差の縮小にあえいでおり利益を確保できなくなっているといいます。
企業や消費者に融資と行っても焦げ付きリスクだけが高まることから利益のとれる投資先をもとめて資金は世界を回遊しており、ジャンク債やリスクの度合いが極めて高い新興国の債券までそのハンティングが続いています。
また株式市場も本来のPERから考えればもう投資できないと思われる水準まで、買い上げられるようになってきており、買っているファンドマネージャーも判ってはいるものの、ほかにもって行先がない以上やめられない状態が続いているといいます。
過剰流動性が収まらないかぎりこの状況は来年も続く
こうした状況はまさに過剰流動性の賜物ともいうべきものですが、米欧の中央銀行が引き締めに動き始めているにもかかわらず、大きな変化は見られない状態で、特に米国で完全雇用下にもかかわらず減税やインフラ投資が進もうとしている状況では来年も少なくとも前半までは、こうした状況が続いてしまいそうな雰囲気が高まりつつあります。
ただ、モルガンスタンレーのアナリストが今年のはじめにいみじくも指摘しているとおり、各資本市場がバラバラに動きはじめていいところどりをする状況というのはバブル崩壊、つまり大暴落の前兆ともいうべきものであり、これまで大きな相場の崩壊の前に現れている不吉な前兆現象であることを忘れたはならない状況です。
バブル相場というのは長く中に漬かっていると特別違和感を持たなくなるものですが、永続的には続かないものです。今年の為替相場ではドル円はかろうじて米国の債券金利とだけは連動していますが、株式市場にはすでに反応しなくなっています。
どこかでこうした相関性のない相場が巻き戻り始めるときが相場の崩壊を示唆する状況なのかもしれませんが、このタイミングを当てるのも至難の業であり、来年の相場にはとくにこの領域の変化をとらえる姿勢が必要になりそうです。
(この記事を書いた人:今市太郎)