昨晩のNY市場ではとりあえず直近に差し迫った、債務上限のつなぎ予算が議会を通過したことから薄い相場でドル円は上昇し113円台を回復する動きとなりました。
市場ではすでに減税案の話から年明けに開示すると、トランプが示唆しているインフラ投資が現実化するとの期待から相場が上昇し、とくに株式相場は米国では3相場そろって上伸するという勢いで、楽観相場はまだまだ継続中の状況となっています。
果たしてこうした楽観相場が2018年も延々と続くのか、いきなり状況が変化するのかが非常に注目されることになりそうです。
完全雇用の現状で、30年ぶりの大型減税が実施され、しかもインフラ投資に莫大な費用を投じるとなれば、インフレは少なからず進行することになり、金利は想像以上に上昇することになるので、景気に支えられて、株価が高値を更新していけるのか金利負担に耐えかねて暴落するのかが大きなポイントになりそうです。
事前の政権公約をほんとうに次々実施しようとするトランプ
トランプは今年減税策が実施にこぎつけられれば「TPP」からの脱退に次いで、はじめて大きな政権公約を果たすことになりますが、インフラ投資の実現を来年に実施しはじめるのもその一つで、前々から口にしてきたメキシコとの壁の問題なども一体どうするつもりなのかに関心が集まりそうです。
ただ、国内問題はどのように行ってもあまり問題はありませんが、イスラエルの首都をエルサレムに認定する話は、実に余分であり、しかも宗教的にも衝突の回避できないような内容であることから、今後政治、宗教が絡んだ複雑な地政学リスクに米国が自ら関与することになり、相当な波乱が起きそうな状況になってきています。
この問題は非常に根が深く、ここ100年や200年争ってきた問題ではないだけに、とんでもない火中の栗をトランプが自ら拾ってしまったことだけはどうやら間違いないようで、ここから先アラブ諸国の反発がどのような形で示現してくるかにも注意が必要になりそうです。
とくに米国そのものよりも米国の友好国であるアラブ諸国で何か決定的なことが起きるリスクも十分に想定され、アラブ圏での地政学リスクをかなり高めることになりそうで、予想外の事態はこれから起きそうな非常に心配な状況になってきています。
続報がとぎれたロシアゲート問題
12月に入って突然ノイズレベルの上昇したロシアゲート問題もその後の動きが伝えられず、相場は一旦大きく下押ししたものの、それ以上の進展がないままに今日に至っています。
どうも全体としてトランプ政権は非常に先読みが難しく、政権公約に忠実に事を成し遂げているといえばそれまでですが、相変わらず非常に不安な要素を多面的に保有しており、安心できない存在を維持し続けている状況です。
とくにご本人自身が関与する問題はかなり深刻で、いつ問題が大ごとに発展するかも気になるところで、米国の株式市場のようにいいところどりだけでは取引ができないのが現実の問題になりつつあります。
北朝鮮の問題も同様で、北朝鮮サイドのリスクもありますが、米国側のリスクもかなり大きなものがあり、年末でも目が離せない状態です。
全体として為替市場は非常に方向感がなく明確性にかけただらだらとした動きをしていますが、残された年末の半月ほどでもまったく想定していなかったことで大きく相場が振らされるという危険性については常に意識しておくべきです。
とくに上昇よりは下落方向のリスクが圧倒的に多いわけですから、ドルロングを取るときには必ずストップロスを置くといった確実な手段を講じることが必要になるのは言うまでもありません。ここからはまだまだ波乱のありそうな不穏な年末相場が続きます。
(この記事を書いた人:今市太郎)