米国の税制改革法案を巡って株式市場参加者の思惑が様々に働いており、史上最高値を更新し続けてきた米国株式市場にも大きな変化が表れ始めています。
ここからさらに株価が調整するようですと債券金利が下落することも手伝ってドル円がさらに下値を模索する可能性も出始めていることから、かなり注意が必要になってきています。
株式の上昇にはついていかなかった為替相場ですが、下落にはそれなりの影響を受けるリスクが高まりつつあります。
FANG株は既に大幅に下落
ここ数年、株式市場に登場し、もはやマジョリティ的存在と化している米国のミレニアル世代はFANGなどのグロース・モメンタム株への偏重投資により、運用者の利回りを非常に高く維持してきました。
しかし、今回減税法案が米国上下両院で可決されたことにより、株式市場の状況にも大きな変化が表れております。
既に11月29日の米国株市場全体では税制改革の見通しを巡り市場の超楽観論が強まっていたにも関わらず、これまで市場をけん引してきたテクノロジー株であるフェイスブックとアマゾン、ネットフリックス、グーグル親会社、アルファベットの4社を指すFANGの時価総額600億ドル(約6兆7500億円)一瞬にして吹き飛ぶ事態となってしまい、グロース株からバリュー株へと相場の主体が変化しつつあることを示唆し始めています。
さらに投資家は減税がどのセクターにもっともプラスの影響を与えるかについて非常に神経質になっており、相場には停滞感が漂いはじめています。
とくに足元での市場参加者の株式購入比率はもはやパンパンに近い状態ですから新たな株を購入するためには入れ替えが必要になっていることは間違いなく、グロース株の下落から売りが加速すれば、株式市場全体の指数がさらに悪化することも懸念されはじめています。
とにかく特定のハイテク銘柄にさえ投資していれば、平均以上のパフォーマンスが得られるというミレニアル世代業界関係者の馬鹿の一つ覚え投資は既に限界が出始めている状況です。
NYダウが2万4000ドル割り込み始めれば大きな下げも
もはや年末に大きな下げはないかと思われてきましたが、どうも状況次第ではそれなりの調整がでることもありそうで、予断を許さない雰囲気になってきているのが今の米国株式市場です。
リスク回避からFLY to QUALITYで債券市場に資金が流れ込むことになれば、債券金利がさらに下落することから、ドル円も大きく下値を試す展開がありそうで、相当注意が必要になってきているようです。
いい材料も多いのに今年はどうも相場の様子が違う
米国の税制改革の話はもっと株価にプラスに働くものと思われていましたが、蓋を開いてみれば足元のような状況で、話は簡単には進まないのが株式市場の微妙な状況です。
為替市場は年末に入ってもドル円はほとんど上昇が期待できない状態で、むしろ下値方向をかなり気にする展開であり、こちらもここ数年続いた年末のドル高を見ることができなくなっています。
とにかくここからはあまり事前に思い込みを強くするのではなく、相場の流れに逆らわずについていく方法を考えることが重要になりそうです。
相場はまだクリスマスまでには時間があるものの、想像以上に薄い状態が続いていますので、相当気を付けませんと思わぬオーバーシュート気味の下落を示現してしまう可能性もありそうです。
なんとか大崩れもなくやり過ごすことができれば大きな心配はなくなりますが、ここからの株式市場の動きと為替への影響については常にチェックしておく必要がありそうです。
実質的にあと2週間あまりが為替市場でなんとかまともな取引ができる時間帯となりますが、今年について言えば最後まで気を抜かないようにして取り組みたいものです。まったく想定外のことが起きてしまうこともありえそうな2017年年末相場です。
(この記事を書いた人:今市太郎)