米国上院議会での可決期待からドル円は112円台後半で113円台の手前付近で推移していましたが、前米大統領補佐官(国家安全保障担当)のマイケル・フリンが、ロシア大使とのやりとりについて連邦捜査局(FBI)捜査官に虚偽の供述をしたとして、1日に首都ワシントンの法廷で有罪を認めたことから事態は急展開し、株もドル円も大幅に下げることとなってしまいました。
111円台初頭にまで下落したドル円は111円を割りかねない下値模索意識が続きましたが、結局上院での採決期待も残ったことから112円台まで戻して週末の取引を終えようとしています。
7のつく年の大幅下落リスクは去ったと思ったが・・
既に年末までの実質稼働日が20日以下ということもあり、クリスマス前には大きな相場下落の材料も見当たらないため、7のつく年の下落はとうとう回避されたのかと思いましたが、フリンが有罪を認めたこと、ならびにトランプに指示されてやったと証言していること、さらにその証拠のテープをFBIが既に手中に収めていることで、状況は大きく変化しそうなところに来ています。
弾劾裁判までには相当時間がかかることになるのでしょうが、雰囲気としてはニクソンが引き起こしたウォーターゲート事件に近いものになりつつあり、事実が次々と青天白日のもとにさらされるとトランプは結局のところ辞めざるを得ないことになるのではないでしょうか。
ご本人はこの日必死にティラーソンの解雇はありえないと、違う話を材料にしたツイートに終始していますし、ホワイトハウスは声明としてフリンに対する有罪はほかの人間に及ばないなどと気休めの内容を発表していますが、これがトランプ指示ということが明確になるとかなり状況は悪くなりそうです。
いいところどりのNY株式市場もさすがに下落
この報道を受けてNYダウは一時300ドルを超える下落となり、2万4000ドルも割る動きになりましたが、結局2万4231ドルとかなり下げ渋り値を戻して終えることとなっています。
ここのところ常に都合のいいプラスの材料にだけ反応してきた株式市場ですが、さすがに米国内の、それも政権の最高責任者であるトランプ自身の問題ですから値を下げないわけにはいかず大きな影響を示すこととなってしまいました。
この原稿を書いている時点では減税法案の採決は行われていませんが、こうなると週明けの相場が一体どのようになるのかが大きく注目されることになります。
弾劾ではなく辞任か
今後考えられるのはニクソンと同様にトランプが「辞任せざるを得なくなる」という事態です。
これは考えてみれば非常に一時的な事態ですが、ティラーソンの問題を契機に多くの高官が辞任しようとしているとも伝えられており、トランプが辞任すれば事実上この政権は副大統領が継いだとしてもいきなりレイムダック化するリスクはかなり高く、相場がそれを嫌気すれば株は下落、債券市場は本格的なリスク回避から買い進まれて、さらに金利は低下ということになり、ドル円は下落が予想されます。
税制改革法案が通過すればそれなりにドル高に戻ることも考えられましたが、展開次第ではまったく逆さまの動きになりかねないところにさしかかってきているといえます。
これは事件ですから報道次第で「アルゴリズム」が大きく動き出すのでとにかくヘッドライン次第ということになりますが、波乱なく終了するかと思われた2017年相場は土壇場にきて大変なことになってきているようです。
とくにトランプの関わり方の全容が把握されているわけではありませんから、フリンの証言を超える内容が明らかになった場合には相当なダメージがでることになります。
ここからは上にも下にも対応できるように準備を進めておく必要がありそうですし、多くのポジションを抱え込まないように努力しておくことも重要になりそうです。
(この記事を書いた人:今市太郎)