米国市場は感謝祭のお休みに突入しており、殆ど為替相場は大きく動かない状況が続いています。
ただ、この感謝祭前後は株が結構強い勢いを見せるようでNYダウがここからさらにじり高になることも予想されていますが、そんな中で実に不気味な動きを見せているのが米債の「イールドカーブ」です。
とうとう2年債と10年債のスプレッド差は60ベーシスポイントまで接近してきており、「リーマンショック」前の水準を割り込みはじめています。
過去の経緯からいうとこれだけいーるそカーブがフラット化すると株式市場に与える影響は確実に大きくなるはずなのですが、NYダウのほうはまったく意に介さずどんどん上昇を続けており、債券市場とそれに連動する為替市場は株式市場の「リスクオン」の動きとは完全に乖離をはじめていることが改めて確認できます。一体これはなにを示唆しているのでしょうか。
Data Ychart
他国の状況と比較してみると一目瞭然
FTが開示しているイールドカーブの推移状況を見てみますとかなり明確です。
上が「米国債」、下が「日本国債」ですが、ほとんどゼロに近い日本の国債でも一応長短の差はイールドカーブ上はっきりしているものの、米債のほうは短期が上昇して長期が下がり始めており、チャートで見ているほどに差がない状況になりつつあります。
チャートから見る限り、債券市場はインフレ率は今後上昇しないとみているわけで、短期金利は「FRB」が無理やり政策金利を引き上げていますから上昇するわけですが、長期金利はまったく上がらない状態です。
本来完全雇用で求人需要がひっ迫するなら賃金も上がってしかるべきですが、「雇用統計」で発表される賃金上昇はアルバイトの端数のような上昇だけで、物価を押し上げるような話しにはなっていない状況です。
確かに単純労働力やパートの世界はそれなりに雇用の需給がひっ迫しているのでしょうが、ホワイトカラーの世界ではRPAが登場したりAIが肩代わりしたりすることでヘッドカウントを増やさない生産性の向上が続いているわけですから、本質的な賃金上昇は示現していないことが窺えます。
この程度のフラット化は問題ないという意見も
市場ではこの程度のフラット化はまだ問題ないという強気の意見も横行し始めていますが、少なくとも過去40年ぐらいの暴落が起きたタイミングでは必ずフラット化が先に訪れ、酷いときには短期金利が長期金利を超えるという状況も示現して株式相場はおかしくなっています。
したがって足元の状況は;、もはやこれまでとまったく違うと言い切れるのかどうかが非常に気になるところです。相場暴落や激変の兆候というのは実にいろいろなものが指摘されていますが、2000年以降の暴落でも必ずイールドカーブに異変が起きていることだけは事実であり、今のゴルディロックス相場が完全にこれまでの過去の事例を払拭してしまうのかどうかにも注目が集まります。
既に株式市場の専門家の中には米株の状況をお手上げであると説明している向きもいますが、どうも2000年の「ITバブル」や2008年の「リーマンショック」危機のように一部のマーケットのバブルとその崩壊とは異なり、ほぼ全資本市場がバブルの状態であるため、簡単には崩壊しない可能性もあり、システム全体が決定的破綻をきたすまで走るとみる向きも出始めている恐ろしさです。
個人的にはどうも違和感が払拭できないものの、やみくもにショートに走っても意味がない状況であることも理解でき、とくに為替だけ取り出してみると非常に消極的な動きになっていることが気になります。
相場の先行きはだれにもわからないわけですが、これだけ先が見通せない相場というのも逆に相当珍しいといえ、ここからどうやって次の相場の兆候を見出すかが大きな課題になりつつあります。
(この記事を書いた人:今市太郎)