11月も押し詰まってきているタイミングで妙な下落を加速し、とうとうドル円は111円台まで下落してしまいました。
テクニカル的には確かにこの下のラインを割るとさらに下落することが考えられるものの、今一番連動性の高い米国の10年債利回りを考えた場合に、ここからさらに金利が下落してドル円がついていくことになるというのもなかなか考えにくい状況です。
もちろん急激な変動があるのはFXにはつきものですから断定は禁物ですが、この時期にドル円が調整する理由はかなり限られているといえます。
米国税制改革法案通過の可否
すでに米国の下院では共和党案が議会を通過している税制改革法案ですが、上院ではこのまま来年から税制改革を進めてしまうとバブルがさらに走ってしまうという慎重論が根強く出始めています。
これを一番嫌気するのは株式市場でしょうから、株式市場の売りが加速すればこれだけで暴落にはならないにしても為替も一定の下押しになる可能性があり、まず感謝祭前に決着がつかないことでさらに下落が継続するリスクは残されることになります。
ロシアゲート問題
毎度おなじみの「ロシアゲート問題」ですが、モラー特別検察官の捜査チームがトランプ大統領の選挙陣営に対し、ロシア関連の文書の提出を命じた、と米ウォールストリート・ジャーナルが伝えたことから売りが出たとされていますが、少なくとも17日の東京タイムでそれだけがネタでここまで深い売りがでたとは考えにくくかなりの後づけ感の残る理由ではあります。
もちろん市場は嫌気するでしょうが報道だけで1円以上押すとは想定しにくい状態です。
北朝鮮に対するテロ支援国家指定
久々にアジア外遊から戻るトランプ大統領は、おそらくかなり北朝鮮政策について近隣各国首脳と調整をとってきているはずですから、何か強い姿勢をさらに見せる可能性がありそうです。
一部には12月に戦争かなどという穏やかではない話しも出ていますが、少なくとも米国が北朝鮮をテロ支援国家に指定すれば、北から応酬のミサイルの一発ぐらいが飛んできてもおかしくはない状況で一時的なドル円の下落もありそうです。
投機筋の円買いの持ち高調整
この時期にドル円の売り玉としてもっとも考えられるのが、投機筋のドル円の持ち高調整です。
ただ、直近のCME・IMMの通貨先物のレポートを見ますと、なんと最新の動向では投機筋のドル円ロングが13万枚以上に増加するという形になっており、足元の売りとの相反が感じられます。ただ、投機筋も一枚岩ではありませんから、コスト的に資金効率を考えて感謝祭の前に売ってきている向きがいる可能性は十分に考えられます。
この場合週明けからもさらに売りがでるリスクはありそうで、また断末魔であえてドル円の売りを仕込んで年末の利益を出してやろうと画策する向きがいる可能性も否定はできません。
とくに先週の金曜日もっともドル円の流動性の高い東京タイムから始まって、延々とドル円の売りが進んだことを考えますと、保有ロングのほどき売りをしている輩がいるとみるのは結構自然な見方ともいえます。
またこのIMMの持ち高でいいますと過去にドル円ロングが13万枚以上たまるというのは明らかに買いすぎであり、ロングのバイアスがかかり過ぎていることは事実で、自律的に下落する局面に向かう可能性も十分にあるとの指摘もでてきています。
この場合あくまで過去のケースではありますが、4%程度の下落を余儀なくされた実績もあり、仮に114.700円という直近の高値からの4%調整ならば110.112円レベルまで下落してもおかしくはないところにきています。
すでに111.800円という直近のサポートレベルを割れるかどうかまで下落しているわけですから、ここから110円台に突っ込んでもそれほどおかしなことではなさそうです。
しかし先週114円の手前まで戻したドル円がずいぶんと急激に宗旨替えとなってしまった感は否めず、本当に下方向なのかはかなり疑心暗鬼な状況ですが、ドル円のロングが想像以上にたまっていることからこれのほどき売りが加速した場合110円台まで下落することも視野に入れた対応が必要になりそうです。
23日の感謝祭前までは、とにかく下方向に相当注意をしながら売買をしていくことをお勧めします。
(この記事を書いた人:今市太郎)