以前から噂されていた国内FX業者の「レバレッジ規制が10倍」へダウンする話が本格化しそうな状況になってきています。これは金融庁がその旨を示唆しはじめたもので、2018年の秋には実施の運びとなりそうな勢いです。
ただ、その内容を調べていきますとかならずしも消費者保護ではなく、FX業者の経営破綻を阻止するところに大きな狙いがあるようにも思え、なかなか納得のいかない部分が見え隠れしてきます。
金融庁が求めているのは店頭FX業者のリスク管理強化
このレバレッジ規制の話はとかく利用者のリスク軽減などが口にされるわけですが、実は業者自身のリスク管理を強化するように指導していることがわかります。
まず個人投資家が業者に預託する証拠金の未収金リスクや、業者のカバー先の金融機関の破綻リスクが指摘されている点は非常に気になります。
たしかに大きな相場変動が起きたときには強制ロスカットのしくみがあっても証拠金をはるかに超える損失がでてしまい、それが未収金というリスクの形で業者に重くのしかかることが指摘されています。
直近でも一般社団法人金融先物取引協会が発表した資料では10月に3400万強の未収金が発生していることがわかります。
10月にそんなに驚くべき相場変動があったかと思い浮かべてもあまり該当するものは思いつきませんでしたが、おそらく10月末のECB理事会でテーパリングが始まったのを受けて相場が期待剥落から大きく下落したのがこの原因ではないかと思われます。
ただ、証拠金を上回るぐらいに損失がでるというのはスプレッドがよほど広がらないかぎりありえない話で、業者のカバーにも問題があったのではないかと疑いたくなる状況です。
しかしこうした事実も金融庁にはいいように利用されてしまうわけです。金融庁が指摘しているもう一つの問題はカバー先の破綻問題です。
しかし国内のFX業者がカバー先として選定しているのはほとんどが銀行であり、どこの馬の骨がやっているかわからないようなブローカーは殆ど使っていませんから、本当にカバー先が破綻することなどあるのかという疑問もわいてきます。
さらに店頭FX業者というのは、本当にカバー先をどこまで利用しているのかという根本疑問も登場してくることになります。
利用者のほぼ8割方がドル円に傾斜した投資をして、しかも3か月後から6か月後には新規のエントリーユーザーのほぼ90%近くが証拠金をすべて失って退場していくのがこの業界の特徴ですから、ある意味「自滅するのを待っていれば、別にカバー先がなくても証拠金はすっかりそのまま回収できる」ようにも思われるわけです。
しかしここまで見てくると消費者保護は表向きで、店頭FX業者が潰れないように行政指導しているだけにも見えてくるわけです。
くりっく365は現行倍率維持という理不尽な話も
ところで嫌なのは、くりっく365が取引所の上場商品であることや参入基準が高いことから現行の25倍を維持する可能性があるという話がではじめてきていることです。
確かに「くりっく365」は業界が音頭をとってまともな取引スペースをつくるところからスタートしたもので、店頭業者より安全といった見方もありますし、実際にFXのスタート当初に相当ひどい取引をしていた店頭FX業者もくりっく365の市場参入で標準化のレベルが上がったことも事実ではあります。
しかし、果たして今の段階でまたくりっく365にインセンティブを与える必要があるのかどうかも大きな疑問になります。
店頭FX業者が仮想通貨取引所に参入するのも新な利益確保か
くりっく365の扱いがどうなるかは今後の動向次第ですが、単純にレバレッジが10倍へとダウンした場合にはこれまでの市場規模を確保するために個人投資家サイドが2.5倍もの証拠金を積み上げなくてはならず、同じ証拠金規模で取引が推移した場合、足元の取引量の6割が減少することになりかねません。
また「リピートイフダン」や「シストレ」などのトレードにはより大きな資金が必要となることから、事実上こうした仕組み取引は全滅する可能性も高まります。
店頭FX業者としてはお上には逆らえないので、結局レバレッジダウンを受け入れざるを得ず、売り上げが減少することを見越しているからこそ、仮想通貨の取引所ビジネスに乗り出そうとしていることが非常に強く見え隠れしてきています。
今のところビットコインなどは25倍のレバレッジが維持されていますが、これだけ乱高下する商品に25倍のレバレッジは早晩問題になるのは明らかで、こちらも先行き不安が募るところです。
こうしてみてきますと、ほとんど消費者不在で議論が進んでいる印象が強く、結構不愉快な気分にさせられますが、顧客の反応とは別に、来年の秋には国内のFX市場は大きく後退することを余儀なくさせられそうで、個人投資家としてもこうした状況にどう対応するかを真剣に考える時期にさしかかってきているといえます。
(この記事を書いた人:今市太郎)