毎日このコラムでも書いていますが、ドル円はたいして動かない割には非常に売買がしにくく、政治的なネタが登場するたびに下値を試しに行く動きになることから迂闊に買いポジションをもったままにはできない状況が続いています。
冷静に見れば下値を追う時期じゃないだろう?と思うのですが、世の中かならずしもそうではないようで、昨晩もNYタイム入り前にロンドン勢が最後のひと踏ん張りなのか、113.400円割れを試しに行く動きが執拗にでて、結局その後戻り売りを何度も突破する形で113.900円までショートカバーがでるという、どうも毎日似たような動きを繰り返す始末です。
つまりロンドン、NYタイムの安値がでるまでは余分な売買はせずに待っているのが、もっとも効率的なようで、東京タイムに株が上昇するからという期待で売買しても仲値の上昇すらたいしたものではなくなりつつあります。
年末最大のリスクはやはり米国減税案の行方
もう感謝祭まであと少しですし、どうも妙味のない年末相場になりそうな嫌な予感しかしてこないわけですが、ここから12月の初旬まででやはり厳重注意をしておかなくてはならないのが「米国の減税法案」の行方です。
ニューヨークタイムスで米国の上院が減税案1年先送りという記事がでてから、かなり売り込まれましたし、9日に案がでない可能性という話も嫌気されていますが、この12月9日あたりで法案の内容と可決の可能性が一気に薄れることになれば、妙に楽観的な期待だけから買われた株式相場は薄商いの中でこっぴどく売り飛ばされる可能性も高く、株が下がれば為替も一時的に暴落に巻き込まれる可能性はかなり高まりそうです。
おそらく米系のファンド勢もそのことは相当理解していると思われますので、月末からすでに売りが出始めることも十分に考えられ、年末ドル円相場は上昇と思っていたらまたしても107円台についてしまったというまさかの展開もまだ残されていそうな状況です。
市場はサウジアラビアの政治的な問題もほとんどリスクとして意識していませんが、ほとんどの市場参加者が買いで入っている株式相場は流動性が枯渇すれば、一気にパニック売りとなるだけに為替がそれに巻き込まれるのはかなり厄介な話になりそうです。
114円台から上値の実需の売りが半端ではない
非常に興味深いのは、これまであまり上値には登場してこなかった本邦輸出系企業が来年度を見据えて114円台後半から売りを持ち込んでおり、そのレベルがかなり下がり始めていることです。
実需勢は今後あまりドル円が上昇しないとみているところが多いのか、社内レートから考えれば114円台でも十分にペイするので安全のために売りを入れているのかはっきりしませんが、いったん114円割れを起こすとドル円は簡単に114円台には戻れない雰囲気がかなり強まっています。
114.500円を超えたのだから次は115円台と思ったのはどうやら大間違いのようで、下手をすると年末にやっと115円に届くかどうかのかなり元気のない相場展開になる危険性すらでてきています。
国内個人投資家の多くは、ドル円をロングで仕込んでしまっているようですが、まったく逆さまの発想で高値はショートという選択肢も慎重に検討すべき時期に来ているのかもしれません。
いずれにしても日柄大して動かないドル円のことでこれだけ悩んでみても仕方ないのですが、本来ならば年末に向けて米国の10年債金利が上昇すれば、ドル円も上昇と考えていた向きにとっては今の不可解な状況は判読不能であり、相場の方向性を決め付けられないというのが正直な気分です。
市場参加者の中に我々が日々見ている視点とは異なる見方で相場に参加している人たちがいるようで、しかもそれはどうやら投機筋でもないことだけはおぼろげながら見え始めています。
(この記事を書いた人:今市太郎)