全資本バブルの影響を受け手なのか過剰流動性でもって行き場のない資金がかなりビットコインをはじめとする仮想通貨市場に流れ込み始めており、国内でも大手の店頭FX業者が仮想通貨の取引所に参入しようとしていることが明らかになってきています。
これが特定通貨との組み合わせでFXのプラットフォームでどのぐらい売買できるようになるかはまだ未知数ですが、お上の「レバレッジ規制」が厳しくなる中で、国内FX業者が金のなだれ込む仮想通貨に群がるようになるのは時間の問題のようで、FXの取引ボリュームにも影響がでそうな状況です。
決済機能と独自通貨機能をもつ仮想通貨
すでにこのコラムでは「BTC/USD」を「XM」で取引しはじめたことを書きましたが、まずこの仮想通貨というものには二つの機能があることを理解していただきたいと思います。
ひとつは国を跨いだ送金決済機能で、銀行などの既存金融機関をまったく使わずに、商品やサービスの取引決済ができる点は非常に素晴らしく、この部分だけに限って言えば全く問題ない安心のプロセスを提供しているといえます。
ところがもうひとつ独自の貨幣機能が大きな問題で、ビットコインで決済できる企業やサービスは増えているものの常にローカルカレンシーと比較していくらなのかという問題がつきまとう点がやっかいです。
本来ビットコイン自体として独自通貨機能があれば、1ビットコインで「なにがいくらまで買えるのか」という基本価値があってしかるべきです。
しかし、今のところ国内でも決済に使えるといってもコーヒー一杯飲むのに0.0006BTCが昨日まで必要だったものが、翌日に値上がりすると0.0003で決済可能になり、さらに翌々日暴落すると0.005BTC必要になるといった世界恐慌後のドイツの市場のような形になるわけですから、決済はできても実に使いにくいのが実情です。
また決済にあたっては取引所の手数料が高く、購入金額が10倍にでもなっているならば国内での決済妙味はありますが、リアルな社会でBTCを今積極的に使う意味合いが実需面でどこにあるのかはまったくわからない状態です。
また取引所もインターバンクのような存在ではありませんから、ローカルカレンシーへの交換レートはまちまちで、せっかくネットで売買できるのに実際の交換はいきなり町の為替ショップの現金取引に近い状態になる点もなんとも納得がいかない状況です。
もちろんアービトラージで一儲けでもするつもりなら、このいびつなマーケットを好感するトレーダーもいることでしょうが、現状の不可解な取引体制は決してお勧めできないのが実情です。
FX業者が取引所に参入すればかなり標準化を期待
そんな中で国内の大手店頭FX業者が取引所ビジネスに参入することになれば、これまでもっとも問題と思われた売買のプロセスの部分に透明性が高まり、かなり安心して取引ができるようになりますし、ネットを利用する妙味も高まるといえます。
取引手数料も競争環境が出現すれば安くなりますから、これも歓迎です。またローカルカレンシーとの組み合わせによりCFDなどのツールでも売買ができるようになることが期待されますので、体制整備という点では非常に好ましいともいえます。
しかしビットコインをはじめとする仮想通貨は、もっとも市場が大きなビットコインでも実需が存在しないだけに市場参加者のほぼ全員が投機筋のようなものですから、上昇しているときはいいのですが、下落がはじまると妙に流動性が下がって皆が売りに回ってしまい、予想以上に売り込まれるという状況の繰り返しになっており、この通貨の「ファンダメンタルズ」は市場参加者の心理状況なのではないかとさえ思われる状況です。
取引所に入金してレバレッジをかけずに保有して高くなったら売るといったやり方をしていれば投入額以上の損失は免れると思いますが、果たしてレバレッジをかけはじめてどのぐらいまで耐えられるのかが、あまりにも価格変動の激しい通貨だけに非常に気になるところです。
国内の店頭FX業者のこの世界への参入は期待できる部分もありますが、本質的な仮想通貨の貨幣価値に関する問題は依然として根強く残る状況で、今後国内でこの市場がどうなっていくのかに関心が集まりそうです。
(この記事を書いた人:今市太郎)