このコラムでもたまにご紹介しています、シカゴCMEのCFTC建玉明細でのドル円の投機筋ポジションの推移を見ていくことでも一体のドル円相場予想というものが可能になります。
今回は年末も近づいていますので、この視点から11月以降の相場展開について考えてみることにします。
そもそもIMMの通貨ポジションとは
この「IMM通貨先物」というのはアメリカの先物取引所として有名なCME・シカゴマーカンタイル取引所が取り扱っている通貨先物で、それが「IMM通貨先物」と呼ばれています。
もちろんこれが投機筋の先物のすべてではありませんが、IMM通貨先物は米系ヘッジファンドなどの投機的な取引に使われていることから、大きな流れをつかむのにはかなり便利な数字情報といわれてるのです。
IMMが発表する通貨ポジションは実は投機筋だけではなく、ノーマルな投資家の数字なども発表されていますが、市場にもっともインパクトを与えるのが投機筋であることから、投機筋の情報がもっとも注目されるようになっています。
このIMM通貨先物の買いポジションは一般的に大きくなりすりると後に下落し、売りポジションが大きければ後に上昇する可能性が高くなると言われているのです。
足もとのドル円は買われすぎ
10月24日現在27日のNYタイムに発表された10月24日付けのドル円の投機筋のポジションはさらに買いが増えて、過去のレベルから考えても相当な強気レベルに到達しています。
年末に利上げの可能性がほぼ間違いない状況ですし、テイラーのような強気派のFRB議長の名も挙がっているわけですから、投機筋が強気に思って買い上げるのは理解できますし、実際相場もそれにともなって上昇してきているのが現状です。
しかしこの買いポジションのつみあがりレベルは過去のケースからみた場合には、なんとその後ほぼ4%近く円高にシフトしたケースがあり、ドル円は年末に向けて上昇すると強気一辺倒で考えている向きにはかなり注意すべき塔婆状況になっていることがわかります。
114円をベースにして4%の下落となると110円程度までは下押ししても決しておかしくはないですし、本邦生保勢が待ち構えているという下値レベルにも当てはまるところがなんとも微妙です。
日米金利差でドル円が動くという話は嘘
多くの為替の専門家はドル円は、「日米金利差が大きくなるとドル高に動く」と教科書どおりの解説をしており、実際年末に「FRB」が利上げを実施すればドル円が上昇するのは当たり前という解説をしています。
しかし、「FRB」の「ゼロ金利政策」解除で日米金融政策の方向性の違いが明確となったにもかかわらず、相場はドル安・円高方向に振れており、今年はこれまで3月、6月と2回の米利上げがあったのに、円は年初から2%以上上昇した経緯があります。
もちろん一時的にはロジックどおりに動くこともあるわけですが、投機筋のポジションの偏りが相場に大きな影響を与えることは常に考えておかなくてはなりません。
11月に向けてユーロ円やユーロドル相場の傾きすぎを投機筋が自ら調整する動きに出た場合にはドル円にも応分の影響がでることは必至で、とくにユーロ円の解消売りが進むとドル円自体のポジション調整に拍車がかかり、年末前に一端ドル円が下落するという、まさかのリスクも飛び出しかねない点にはかなりの注意が必要です。
だいたいこうした投機筋の大胆な方針転換などがでると相場はなにが理由なのかわからずに大きく動くこともありますので、週明けからの相場はちょっとこのあたりにも気をつける必要がありそうです。
先週末のユーロ円とユーロドルの動きなどを見ていますと、いよいよ月末に向けて投機筋がそれなりに考え方を変えてきている可能性が強く、思わぬ方向に相場が動くリスクを相当意識する必要がありそうです。
(この記事を書いた人:今市太郎)