トランプ大統領は25日の米国テレビでのインタビューにこたえて「イエレン議長」の再任を検討していると述べて市場がざわつきはじめています。市場はすでに新しいFRB議長を想定してきているだけに今頃イエレンもその選択肢とトランプが発言したことにはかなり驚きをもって捉えられているようです。
そもそもイエレンは10月で退任するフィッシャー副議長の愛弟子のような存在で、とにかくトランプ政権によるドッドフランク法廃止の動きに激怒している存在といわれ、フィッシャー退任後は「金融政策」の政策正常化を進めて2月にとっとと退任したいと考えている気配濃厚な存在でした。
しかしここでイエレン続投となると、できるだけ利上げを遅らせて足もとの「中央銀行」バブルを温存したいトランプの腹積もりをの整合性が発揮できるのかどうかが大きな焦点になりそうです。
トランプ、イエレン会談はすでに実施されており、本人からも続投の意向がとれているのだとすれば実現性の可能性は結構高まることになりそうです。
イエレン続投なら12月利上げはなしか?
イエレン議長は2月退任を視野にいれて10月の資産縮小開始と12月の再度の利上げを視野に入れているものとみられてきましたが、仮にこのまま続投となったときにトランプからその条件としてなにか注文をつけられていないのかが気になる部分となってきます。
長短金利差を示す米国債の「イールドカーブ」はかなりフラット化が進んでおり、このまま利上げを続ければごく近い将来に米国の株式相場が我慢しきれなくなることはほぼ間違いない状況ですから、いかに利上げを遅らせるかがトランプの大きな期待値となっていることは明確で、果たしてイエレンが続投した場合にトランプのこうした希望に応えるのかどうかが非常に気になるところです。
仮にイエレン続投となれば12月の「FOMC」での利上げをあえて見送るという選択肢を登場させてくる可能性もあり、トランプがどう考え、イエレンがそれにどう応えるのかが非常に大きな関心事となりそうです。
大統領就任前はボロクソに貶したトランプの宗旨替え
もともとイエレンは民主党支持者ですし、トランプとの親和性はそもそもかなり低い存在で、いくら辞め際に賞賛されてもそれに気をよくして続投するのかどうかはまったくわかりません。
そもそもトランプは大統領選で公然とFRBイエレン議長をボロクソに貶していた存在で、当然本人の耳にもその情報は入っていますから、今ごと立派な人物だと言われてその気になって続投するのかどうかはかなり怪しいといえます。
ただ、トランプ政権下では学者系統は簡単にFRB議長に就任するのをかなり嫌がるという話も伝わってきており、簡単に外部から引き受ける存在がいないという問題もあるようですから、とりあえずイエレンで続投というのも十分にありうる話なのかもしれません。
来年のFOMCメンバーはタカ派ぞろい
気になるのはそれ以外の空席になっている部分をどのように充足させることになるかで、ブレーナード理事が唯一ハト派である以外は、入れ替えとなる地区連銀総裁もほとんどがタカ派になるため、イエレン続投で本当にハト派的展開を維持できるのかという問題も生じることになりそうです。
いずれにしてもこの人選は11月3日ぐらいまでには正式発表になりそうですが、それまでは候補として名前があがる人物次第でドル円が乱高下するリスクも残されており、イエレン続投となったときに相場が大きくドル円を買い上げることになるのかどうかも注目されます。
この秋相場は全体として想定外のことが結構次々と起こっており、事前予想が覆されることも多くなっていますので、FRB議長人事も思わぬ方向に舵が切られる可能性に相当注意が必要になりそうです。
(この記事を書いた人:今市太郎)