10月に入ってからのドル円はかなり狭いレンジでの上下に終始しており、明確な方向感がでているわけではありませんが、この時期に注意しておかなくてはならないのがファンドへの顧客の解約に絡むレパトリ需要で、通常11月末までの解約を見越すと10月15日までにこうした理由からのドル買いが増えるとされています。
この解約期日は15日きっちりに出るわけえではありませんから、すでに相場にはそうした流れが出始めている可能性もありますが、今年は大きくドル円相場が偏ったポジションで形成されてはいないことから、それほど大きな動きにはならない可能性を指摘する声も聞かれます。
また今年に関しては多くのファンドが利益をそれほど積み上げていないことから、解約に際して大きく取り崩すこともないという見方もでています。
今年については外資系ファンドの日本株買いが2013年時のように大きく進んでいませんから、株の売却にともなってドル円が連動して売られるという動きも顕在化しませんでしたが、FX相場にヘッジファンド解約の影響がでることになるのかどうかが注目されます。
現状の相場状況を見ていますと、ドル円ドル高傾向にはありますが、大きく買いあがりそうには見えず、それほど多大な影響は与えていないようにも思われます。ただ今週から来週にかけては一応注意が必要となりそうです。
輸出勢の年末までの為替はほぼ確保済み
本邦の輸出勢はすでに今年年末までの為替の手当は完了している模様で、来年1月から3月の手当てを行っている模様です。
直近の日銀短観によりますと、製造業の大企業の社内の為替レートは109.27円となっていますので、足元の相場はかなりそれよりも高く、場合によってはさらにここから年末にかけてドル円を追加で売ってくることも考えられる状況です。
面白いのは輸出勢というのはかなり計画的に為替の予約をしたり売買をして仕込みを行いますが、輸入税は出たところ勝負の会社がほとんどで、石油関連などの企業は価格をそのまま販売価格に転嫁しやすいことからあまり積極的に為替の予約を行わないことでも知られています。
例年需給面で年末に向けてドル需要は増える傾向に
これは例年のことですが、年末が近づくにつれてドルの調達需要は高まることになりますから、相場のトレンドとは別にドル円は上昇傾向にあることは間違いありません。
ただ、ほかの要因に打ち消されることも多分にありますので、常に年末はドル円が高くなると決め付けるのは非常に危険です。
ごく一般的なものですが、こうした動きは11月に入ってから顕著になることが多いことが確認されていますので、今年も例年同様に一定の注意が必要です。
トランプ政権の本国投資法成立の動向にも注目
市場で注目されているのはトランプ政権が打ち出す常設の本国投資法、つまりレパトリ減税で、2005年のブッシュ政権で単年だけで実施されたときには、ドル円が大きくドル高になった過去の実績があります。
この法律は実施されることが決まっても来年になりますから、この秋にすぐ動向が変化するとは限りませんが、企業の場合には前倒しで準備をするケースも考えられますので、法案の行方には注意をしたいところです。
米系の金融機関の試算では海外においてある米国系企業の資産は2.5兆ドルとも言われています。
そのほとんどはユーロドルが絡むものが多くなりそうですが、1割がドル円だとしても結構相場を動かす材料になりますから、この本国投資法が施行されますと対円でもドル高の傾向が強まる可能性がでてくることになります。
このようにFX市場では実需が絡む相場の材料で、一定方向に特定通貨ペアが動く時期というものがかなり明確になっています。
日ごろはあまり意識しないことでも後から考えてみたら実はこうした材料が影響をしていたということはありえますので、強い傾向になるかどうかはわかりませんが、あらかじめ知っておいて悪いことではありません。
(この記事を書いた人:今市太郎)