この10月で米国は「リーマンショック」からの立ち直りで景気回復がはじまってからとうとう100ヶ月を迎えることになります。これまでの米国の景気拡大期の平均が58ヶ月ですから相当な好景気期間が続いているということができます。
ただ、これはご存知のように「リーマンショック」が単なる民間の金融機関のリスクイベントであったのに、当時のグリーンスパン「FRB議長」が100年に一度の金融危機であるとの認識を示して「中央銀行」主体で大幅な「金融緩和」を行い、無理やり株価をもとに戻したという経緯があるからです。
足元の米国の株式市場もファングなどと呼ばれる、IT系優良株が猛烈に市場を牽引しているものの、NYダウや「S&P500」のほかの銘柄はそこそこの上昇にはなっていないという、かなり特殊な状況が継続中です。
危ない危ないといいながら全然大幅調整しないNYダウ
市場に長くかかわってきた投機筋などの関係者はすでに株式市場から現金を引き出して、手元のキャッシュポジションをかなり増やしているといわれます。
常に市場に話題を提供している「ウォーレンバフェット」も今年に入ってから長期保有していた株式をかなり積極的に売却しており、キャッシュ比率はかなり高まっているといわれています。
9月の「FOMC」以降投機筋の米国10年債の保有率は若干減少はしているものの、過去10年ではもっともロングの保有比率が高くなっており、投機筋は依然米国の金利が急激には上がらないと見ていることがわかります。
相場大幅下落の兆候はかなりそろっている
ただ、市場の楽観ムードとは別にいくつかの相場下落要因の外堀はかなり埋められつつあることも事実です。まず、今年はじめに主要な資本市場の相関性が大幅に崩れだし、これまでのような金融市場間の相関、逆相関がまったく役にたたなくなりつつあります。
これはすでにモルガンスタンレーのレポートにも登場していることで、暴落の前兆現象として過去にも何度も見られたものとされています。
また、毎回ご紹介しているように米国債券の長短スプレッドがフラット化をはじめており、10月からの「FRB」の資産縮小が決定してからもこのスプレッドのスティープ化はほとんど進んでいません。
過去にはフラット化しないで暴落が起きてしまったケースもあるようですが、2008年やその前のITバブル崩壊時にも金利のフラット化が顕著に見られており、ひとつのバロメータとして機能することは間違いない状況です。
「FRB」は金融引き締めに動いており、過去の暴落でも中央銀行の金融引き締めが大きな相場下落のきっかかになっていることは見逃せない事実です。
雇用関連ではすでに完全雇用が実現していますから、ここからは数字が悪くなることしか考えられず、これ以上失業率が下がるとは考えられない状況です。
VIX指数が異常に低く推移しており、まったく市場がリスクを感じていないことも暴落前の前兆としては非常に気がかりなものとなります。
これに景気拡大開始から100ヶ月という実績がついてきているわけですから、もはやいつ調整があってもまったくおかしくはない状況で、「ウォーレンバフェット」が利用している有名なバフェット指数は150を超えるところまで上昇しており、完全にバブルを示唆しています。
これだけの要因が揃いはじめているわけですから、過去に暴落に遭遇したことのある投資家ならかなり警戒すべき時間帯にすでに突入していることはどうやら間違いなさそうです。
ただし下落がいつなのかは誰にもわからない状況
これだけの条件がそろい始めているわけですから、どこかで大きくドスンと相場が下落する可能性はかなり高いわけですが、大地震の発生と同じで、いつ起きるかわからない地震にあわせて毎日ヘルメットをかぶってシェルターの中に避難してはいられないのと同じで、相場でも状況局面につねにショートをもって下落に備えるのは事実上不可能ともいえる状況です。
特に暴落というのはテクニカル的に事前察知が非常に難しいものですから、適切な対応方法というものは見つからないわけですが、ドル円で言えばとにかく短期売買に徹して、長くポジションをもたないといった工夫が必要になりそうです。
10月米国の株式市場は変動が大きくなる時期ですが、いつ何があっても対応できるように準備だけはしておきたいところです。
(この記事を書いた人:今市太郎)