9月最終日のNY市場のドル円は、PCEの数字が予想以上に悪くて大きく下落したあとほかの指標が比較的よくてまた持ち上がるなど結構激しい上下を繰り返すことになりましたが、もうひとつFX相場を動かす大きな原動力となったのが次期「FRB」議長人事の報道でした。
今回まず名前が出たのがケビン・ウォルシュ元FRB理事で、トランプ、ムニューシン共に同氏と議長指名の可能性について協議したとWSJが報じたことからドル円はいきなり買われる動きとなりましたが、ほかの数名とも会ったという続報でまた売られる展開となりました。
ケビン・ウォルシュという人物について
Photo Bloomberg
今回メディアに改めて名前が登場したケビン・ウォルシュ氏は、ブッシュ政権下で2000年代後半に「FRB」理事を務め、共和党との親和性が高いうえにバーナンキ前議長の評価も高かったことから「FRB議長」の候補とされるようで、年初からこの人物の名前はメディアでも取り上げられていました。
同氏は現在、スタンフォード大学のフーバー研究所に所属し、量的緩和に反対し「FRB」の「バランスシート(貸借対照表)」の正常化を主張する立場を取っているのが特徴です。
直近の同氏の主張では「金融政策」における裁量の排除を強く訴えており、現政権の考え方に親和的であるという意味では、有力候補といえる存在のようです。
ただし、緩和反対派とい立場はまだまだ「金融緩和」を続けて「中央銀行」バブルを温存させたいと考えているトランプの方針と本当にマッチするのかどうかが大きなポイントになりそうで、どのぐらいトランプの言うことを聞く人物になるのかが今後の為替相場を大きく動かすことになりそうです。
2018年のFOMCメンバーの空席は5名
来年の「FOMC」を考えた場合、2月に「イエレン議長」は退任、すでにスタンレー・フィッシャーは10月で辞任、タルーロ理事は今年4月に辞任、もともと副議長ともう一人理事の枠が空席ということで、とにかく5名の空席を埋める必要があるのが現状で、7名中5名が入れ替わることになると年末まで継続するであろう追加利上げの先が、本当に金利正常化になるのか緩和的な状況を残すのかはまったくわからないのが実情になってきています。
この人事がきわめて親トランプ的な人物だけで埋められることになるのか、比較的独立性を保った組織として維持されるか次第で、来年の相場にはかなりの影響を与えることは間違いなくなりそうです。
トランプは現状相場の維持も暴落も視野に入れている?
トランプ政権にとっては、現状のあまりにも異常とも思えるゴルディロックスのじり高相場を続けることが減税政策なども打ち出しやすいことは間違いありませんが、その一方で急激に相場が下落したり、10年に一度の暴落が起きてしまえば、あらゆる財政出動を緊急事態をして提示することで議会承認を得やすくできるというメリットも感じているはずですから、バブル相場の継続も破綻も両方視野に入れて「FRB」の人選を行ってくる可能性がありそうです。
ただ、金融市場はどちらでも構わないはずはなく、大幅下落になればそれ相応のダメージを受けるわけですから、トランプが「FRB」人事でどのような舵を切ることになるのかは非常に注目される材料となりそうです。
そういう意味では10月相場の新たな市場材料として、このネタで相場が上下することも覚悟しておく必要があります。
結局何をやっているのかさっぱりわからないトランプ政権ですが、妙な形で方向性を決めていく瞬間が訪れることになっており、まったくダメとは決め付けられない不思議な部分をもって部分に十分気をつけることが重要になりそうです。
(この記事を書いた人:今市太郎)