口を開くたびにその物言いが物議を醸し出す、副総理のちっちゃいマフィアの爺様・麻生財務大臣ですが、彼が突然口にしはじめた武装難民の問題は発言内容自体には相当問題はあるものの、実は難民そのものがもたらす状況は結構為替市場にとっても深刻な問題をもたらすことになりかねません。
今回はこの北朝鮮からの難民が押し寄せてくると、一体ドル円はどうなるのかについて考えておきたいと思います。
世界的に武装難民という定義は存在しない
まず誤解のないように最初に触れておきますが「武装難民」などという言葉は世の中には存在しません。
直近で難民問題で各国に大きな影響を与えたのはシリアから欧州に怒涛のように押し寄せた難民ですが、どこの国でも難民を受け入れる場合には武装解除して受け入れるのは当たり前の話で、重火器をもって無断でで侵入してくる人間は難民ではなく「不法入国者」であり、しかもその重火器を国内でぶっ放せば戦争をしにきたとしか考えられないのはすでに万国共通の考え方です。
麻生大臣が言う「武装難民」というのが何を指しているのかは正直よくわからない状態です。
いわゆる難民が押し寄せてくる可能性は大
北朝鮮は人口2500万人たらずの国ですから、その1割が難民として国外に流出しても250万人ほどの規模となります。
まず基本的には地続きの国へ移動してくることが考えられますが、現状では国外に出ようとすれば逃亡ということでしょうから、かなり厳しい処罰が待ち受けているはずで簡単に外には逃げられないのが実情であろうと思われます。
ただ、今の体制が崩壊した段階で、自由をもとめて国外に逃げる難民は激増することが容易に予想され、船に乗ればそう遠くはない日本にこうした難民がやってくる可能性はきわめて高くなりそうです。
日本の場合には、これまで隣国から難民が10万人以上の規模で押し寄せてきたことは明治維新後もまったく経験していませんから、まずどう対応するのかが大きな問題になります。
水際で追い返すとか武力をもって制圧するというのは、現実に10万、20万という人たちが日本海側に一度に押し寄せた場合には仕方なく受け入れざるをえなくなるのが実情で、昨年あたりの難民問題が生じたときのユーロの動きを見ていますと、決して通貨高にはならなさそうな状況が目に浮かんできます。
人口減少が進む日本では、日本海側にこうした難民が押し寄せた場合地域によっては難民がマジョリティになりかねない状況で、これにどう対応するのかは結構大きな問題になりそうです。
言語も異なり文化的には50年以上先進国から遅れている「浦島太郎」のような国民を労働力として受け入れられるのかという問題も色濃く残りそうです。
この難民が経済を停滞させるような話になれば、日本からの外資の投資にも影響がでることになり、株式市場から資金が逃げることになればそれに連動した円高が予想されます。さらに日本に進出した外資が逃げ出すことになれば資本がドル転することも考えられます。
問題は偽装難民の存在や国内での事件発生
人道的な支援の立場からいち早く難民を受け入れたドイツのメルケル首相は、その後国内に流入した難民がしでかしたさまざまな事件の発生で、一時政治生命を絶たれる寸前のところまで支持率が下がるというリスクに見舞われました。
とくに受け入れた難民が起こしたレイプ事件などはドイツ人の感情を大きく損なうことになり、結局その後の難民受け入れに大きな影響を及ぼすことになっています。
さらに難民を装った政治的な活動を企てる輩である、偽装難民が流入してくるリスクもかなり大きなものになったのは言うまでもありません。
北朝鮮の場合完全に体制が崩壊しないかぎり、こうした偽装難民が混じってくることも十分に考えられますし、テロや拉致などが起きれば国内政治は大混乱になる可能性が高まります。ある意味ではロケットが上空を通過するよりもかなり深刻な問題になる可能性があるというわけです。
地続きで人の流入が日常的におきる欧州であっても、これだけの混乱に見舞われたわけですから、そもそも難民慣れしていないこの国で同種の問題が起きれば、そうとうな混乱を引き起こすことになりそうです。
初動は円高、しかし事態の内容次第では円安へ
難民が押し寄せてくる事態になると、最初の段階ではいつもながらドル円なら円が買われる動きになりそうですが、流入した難民が国内で問題を起こし、それが政治経済に深刻な影響を与えることになれば、今度は円売りが加速する可能性は高くなりそうです。
さらに、武装難民なる存在が本当に最初から押し寄せてきた場合は、難民ではなく不法入国者の武力的侵入ですから、早い話が国内で戦争になることが予想され、この場合は完全に円安に向かうことになるのではないでしょうか。
総選挙が近いこの時期にどうしてこうした話が突如として浮かび上がるのかはかなり疑問ですが、危機を煽っても憲法だけ改正してみてもなんら解決のつかない問題であり、国は難民の定義とその出現にどう対応するのかを明確にすることのほうが先の状況になってきています。
これは本当に起きるとFXにも相当な影響が出そうです。
(この記事を書いた人:今市太郎)