「BREXIT」が決定しインフレ率が上昇したこともあって、ポンドの利上げ期待から9月はとにかくポンドの上昇が大きな話題となりました。本邦投資家ならポンド円を取引された方も多かったことと思います。
今月のMPCではさすがに利上げは行われませんでしたが、まだその可能性が高いということから上昇は継続するかと思われましたが、ポンドにはそれ以外にも相当な材料が混在していることから、ことある毎に下落のリスクに見舞われることになるようで、ある意味ビットコインも顔負けの大きな動きとなってきています。
メイ首相の演説で下落
まずメイ首相がフィレンツェで行った演説で、EU離脱の方針について新たな詳細を示さなかったことでポンドは22日大きく下落することになりました。
どうもメイ首相が牽引しているEUとの離脱交渉は当初の期待ほどうまくいっていない様子が見え隠れしはじめており、総選挙で負けて以来どうもこの首相の政治的な指導力が問われる局面にさしかかってきているように見えて鳴りません。
本当に離脱まで貫徹できるのかどうかが注目されますが、市場では勝手に期待した向きがポンドを売り込んで一時的ではありますが5%近い下落を時限することとなってしまいました。
ムーディーズの格下げで大幅下落
この日格付け会社のムーディーズが英国の信用格付けを「Aa2」とし、突然1段階引き下げたことを発表し、NYタイム引き際のポンドは大幅下落となtってしまいました。
メイ首相の演説で一旦下落したのをもとに戻したはずだったポンド円は、終末に引き際ぎりぎりにまたしても下落に見舞われることとなってしまったわけです。
ムーディーズはEU離脱の経済的悪影響を大きく和らげるEUとの自由貿易協定を英政府が結べるともはや確信していないと説明しており、中期的に英経済の強さが衰えることで、財政圧力が悪化することを想定し、EU離脱交渉の複雑さと関連する国内政治の動きを踏まえると、政策決定に対し明らかに課題が増しつつあるとも厳しい指摘をしており、今後決して順調にはいかないことを示唆しています。
このムーディーズ起因による下落は、いわばフラッシュクラッシュのような動きであり、ほとんど主要な取引のなかった時間帯に、しかも架空通貨とも言うべきポンド円で起きていることですから、実際にはストップを置いておいたとしても猛烈なスプレッドの広がりでほとんど損切りができないままに損失だけでた可能性もあり、月初から10円近い上げを享受できた向きもそれなりの損失を一瞬で吐き出さざるを得なかったのではないでしょうか。
メイ首相の演説で下げたところを底値と思って買いあがった、向きも再度損失を受けた方は二重の損失になった可能性もあるところです。
金利だけを目当てに買い上げるのは相当慎重に
投機だけを主体とするクロス円の通貨ペアというのは、もともと実需に支えられているわけではありませんから、上がるときも驚くほど上昇しますが、逆に下落するときは市場参加者の殆どが売りに回るといった厳しい状況に見舞われることになります。
これは今流行のビットコインにもつながる現象で、ファーストインで参加しいち早く売り抜けられた輩にとってはこの上ない利益機会となるわけですが、メディアなどが騒ぎ出したり、ツイートなどでもポンドが儲かるという話を聞きつけて追いかけで参入しようとする向きにとっては完全に後追いの世界になりますから、ひとたび異なる問題が市場に登場すると信じられないぐらいのスピードで相場が下落することも十分に視野に入れておく必要があることを痛感させられる終末の事態となってしまったのです。
単純にチャートだけ見てファンダメンタルズに耳を貸さない取引をしますと、こうしたことに巻き込まれるリスクが高まるということだけは改めて意識しておく必要がありそうです。
(この記事を書いた人:今市太郎)