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「FOMC」を通過して113円台を試すかどうかが非常に注目されたドル円でしたが、またしても北朝鮮ネタによるノイズで突然大きく下落することとなりました。
これは、北朝鮮の李容浩外相が、トランプ米大統領の国連演説への対抗措置として、「太平洋上で過去最大級の水爆実験」の可能性に言及したという韓国の報道に「アルゴリズム」がいち早く反応したことから大幅下落となったもので、「太平洋での水爆実験」というキーワードが完全に一人歩きすることとなってしまいました。
まあ、この流れに至った経緯を考えますとトランプがやたらと、ロケットマンだマッドマンだと子供のように誹謗中傷をくりかえしたかなり大人気ない発言や、わざわざ国連にまで言って圧力をかけるしかないなどと、ろくでもない演説を実施した安倍首相にもかなり大きな責任があるのではないかと思いますが、低レベルの罵り合いでどこまで本当の話なのかがまったく見えなくなってしまい、ドル円はいきなり111.600円レベルまで下落することとなりました。
しかし、このレベルには本邦生保の買いも潜んでいたようで、これまで上値を押さえていたところでなんとか止まった格好になっています。
強行発言だけが一人歩きしてしまいましたが、太平洋上で核実験を行うと想定した場合、一般の船舶や潜水艦を使った実験は難しく、水爆の弾頭を搭載した弾道ミサイルを発射する方式になる可能性が高まることからまたしても日本の上空を核弾頭搭載ミサイルが通過して、Jアラートが鳴り響く事態が想定されることになります。
押し目を買っても簡単に戻らなかった相場
前回北のミサイルが発射されたときには襟裳岬から2000キロも離れたところに着弾しただけでしたので、相場は「アルゴリズム」の反応で一定の下落をしましたが、その後はあっという間に戻しても元のレベルより高く上昇するといった動きを見せたことから、パブロフの犬のように多くの個人投資家も東京タイムのこの下落に、いわば当然の流れとでもいうように押し目買いで参入したことが間違いありません。
しかし相場が112円台に戻るまでには相当な時間がかかり、しかも一旦底値をつけたかに見えた相場はさらに下落して111.652円までつけることとなりましたから、明らかに前回とは違う感触をもった市場参加者が多かったのではないでしょうか。
その後のNY市場でも一回も112.200円、つまり低下する200日移動平均線を越えることができずに週の取引を終えることになってしまい、一転して上値の恐ろしく重たい相場となったのは印象的でした。
事件の予想より価格分析で乗り切るしかない相場
FX市場を動かす要因は実に多くのものがありますが、事件、事故の類は予想がきわめて難しく、とりわけこの北朝鮮ネタに関してはいくら戦争の可能性やミサイルの着弾領域の可能性を素人が研究予想してみてもほとんど意味はありません。
むしろこうした事態が起きてからの「プライスアクション」をよくみて取引する通貨ペアの価格を分析することのほうがより重要であろうと思われます。
フィボナッチリトレースメントで見ますと、ドル円は前回の高値の114.490円から9月の最安値の17.308円までの61.8%はすでに超えていますから、あまり使いませんが78.6%戻し(61.8%の平方根)というレベルとなる112.96円を超えるかどうかが注目となります。
これを超えますといよいよ全値戻しも意識しなくてはなりませんが、すでに今月5円以上動いているわけですから、日柄の調整が伴わないとさらなる上値は終えない可能性が高まりそうです。
これが正しいかどうかはまだまったくわかりませんが、「FOMC」を受けてかなりいいところまで上伸してしまったことはどうやら事実のようですので、来週以降は戻り売りも意識しながら取引を進めていくことがよさそうな状況といえます。
多くのアナリストがここからドル円はドル高を予想していますが、そうそう簡単に一方向に動くとは限らないようみ見え、予断をもって取引しないことがもっとも重要に思われます。
(この記事を書いた人:今市太郎)