5日、レイバーディ明けのNY市場では株は北朝鮮を嫌気して大幅下落し、為替は債券金利が大きく下落したのにあわせてドル円が108円台に突っ込むなど非常にネガティブな雰囲気が強まっています。
イールドカーブの長短金利差はかなり低いところまで迫ってきており、過去の暴落を考えるとなんともいやらしい雰囲気を醸し出し始めています。
DATA YCHART
昨晩のFX市場におけるドル円の下落の主犯格となったのが「FRB」ブレーナード理事の「ハト派」発言でした。
同理事は講演でインフレ率が目標達成に向けた軌道に乗っていると確信を持てるまで、政策の一段の引き締めについて慎重になる必要があると指摘し、さらに「インフレ」が一時的にわれわれの目標をやや上回っても容認することを明確に示すことが重要だと考えているとの見解を示したことから、市場では利上げ後退感がたかまり、債券金利が一気に下落する動きとなりました。
このブレーナード理事は、ヒラリークリントン政権が誕生すれば財務長官に抜擢されると目されていた人物で、とにかく根っからのハト派で慎重姿勢を一切崩さないタイプですが、ほんとうにこれが「FRB」の総意となりうるのかについては甚だ疑問が残る状況です。
Photo Reuters.com
利上げはしないがなぜ資産縮小はできるのか?
この9月の「FOMC」では資産縮小はほぼ間違いなく始まるだろうといわれています。
不思議なのはブレーナード女史がなぜ利上げに言及しても資産縮小には言及しないなかで、これだけ気が狂ったように市中にばら撒いた資金を回収しはじめれば、金融市場に影響が及ぶことにまったく懸念を示さないことです。
結局今回の資産縮小は長短金利差がなくなって事業経営に苦しむ金融機関を救済することが非常に大きな目的で、資産縮小と利上げを一緒に行ってしまうと結局短期金利が上がってしまい、またしてもフラット化してしまうことを懸念した措置なのではないかとも思える次第です。
今頃「インフレ」の話が飛び出してきていますが、これは今年3月も6月もほぼ状況は変わっておらず、先進国はよほどのことがないかぎり「インフレ」状態にはならないのが現実で、「FRB」がいま利上げを急ぎたいのは明らかに次のリセッションのときに金利をいじる「金融政策」ができるようにして退任したいという「イエレン議長」の張らずも里が大きく影響しているからにほかなりません。
ブレーナード発言は一見正論には見えますが、都合4回利上げした話との整合性はほとんどなく、ここから結局「FRB」が無理やり利上げを敢行するのであれば、市場をきわめて霍乱する発言となってしまいます。
サプライズは年末予定通りの利上げ
来年には3%台にまで金利を上昇させたいと考えている「FRB」が、インフレ率を理由に本当に利上げを後ずれさせるのかどうかはかなり大きな疑問が残ります。結局12月に利上げをしてしまうのではないかというリスクは、まだかなり高い状況にあるのはないでしょうか。
これまで株価も上昇し好況が伝えられた時期に、なぜイエレン「FRB」は利上げを進めておかなかったのかかなり疑問が残りますが、土壇場になってまともな状況に戻したいという意思が働いている以上「FRB」が簡単に利上げを諦めるかどうかはまだよくわからないといえそうです。
それにしても本格的な幕開けとなった秋の相場は、北朝鮮の影響なのか「FRB」関係者の発言の影響なのかは別として大きく落ち込んだところからスタートしているだけに、この状況がいつまで続くのかが非常に気になるところです。
世界恐慌が起きた1929年も「リーマンショック」となった2008年もデイバーディ明けから急激に相場の状況が悪化したのは有名な話で、昨晩の市場の動きはそれを実に彷彿とさせるものがありました。
今晩は「ECB理事会」でまたひと波乱ありそうな気配ですが、ドル円に関するかぎり上昇よりも下落に備えなくてはならない時間帯にさしかかってきていることだけは間違いなさそうです。
(この記事を書いた人:今市太郎)