北朝鮮の核実験をめぐっては米国サイドから堪忍袋の緒が切れそうな発言も飛び出しつつありますし、石油も根絶やしにして、これまでにない兵糧攻めの計画も飛び出しているようです。
われわれは常に戦争が起こるのかどうか?そのときFX市場での為替の動きがどうなるかに注目しているわけですが、このせめぎ合いの落としどころというのは一体どこにあるのでしょうか?
戦争状態が短期に終わるという保障もなければ、仮に指導者を排除することができたとしても、この国はその後どうなるのかという問題はほとんどメディア上にも上がってこない状況です。今回はこの部分について考えてみたいと思います。
難民が日本に押し寄せてくると一大事
「ミサイルが国内に着弾したらどうするか」といった危機管理の話は非常に多く登場していますが、実はそれよりも実利的に困ったことになるのは北の国から難民が押し寄せてきた場合です。
拉致で相手国に簡単に連れ去られてしまった距離感は、先方から日本に向けて船で難民が押し寄せてこられる距離でもあり、真冬前に北朝鮮が攻撃されることになるとこの難民が日本海側の地域にやってくる可能性はかなり高くなってしまいます。
北朝鮮は人口2500万という規模ですが、日本には難民が100万人規模で到来したという経験が少なくとも明治維新以降にはありませんから、そもそも難民に対処する仕組みもなければ、国民の意識も猛烈に希薄で、300万人とか500万人が押し寄せた場合にはかなりパニックになることが予想されます。
ミサイルが飛んでくることよりも、この件が現実化するほうがかなり怖いことになりそうですし、国内経済にも影響を与えることになりかねません。
韓国が南北統一に乗り出すとめちゃくちゃなウォン安に
Photo Reuters.com
仮に北の刈上げの将軍様が成敗されてしまい、いなくなったとして時にこの国は一体どうなるのか?も大きな問題です。
ほとんどの周辺国は民主化になってまともな国になるのを面倒みたいとは思っておらず、おそらく指導者の首の挿げ替えをして、リスクをなくしてもそのまま不思議な全体主義を継続させて、低成長のまま存続することを期待しているのではないでしょうか?
もちろん韓国は南北統一に動くことになるのでしょうが、ベルリンの壁が取り払われて東西統一となったドイツは、その後東の低成長を吸収してひとつの国として大きな成長を実現できるまでに10年以上の時間をかけることになりましたから、韓国にもえらい負担がのしかかることは間違いなく、低成長と財政出動を余儀なくされる韓国経済の後退は為替の世界ではウォン安となって現れ、円高がサイド示現する可能性がきわめて高くなります。
南北朝鮮の統一にかかるコストは250兆円との見方も
かなり古いデータではありますが、韓国の全国経済人連合会が2010年に試算した南北朝鮮を統一させるためのコストはその当時でも「250兆円必要」になるとされており、現状を考えればそのコストはもっとかかる可能性がでてきています。
米韓で合同軍事演習をおこなっている一方で、米国は韓国とのFTAを見直すと言い出しており、なんでもかんでもやさしく手を差し伸べる状況にはありませんから、こうしたコストを韓国が一体どこから捻出するのかも大きな問題になりそうです。
中国やロシアに依存することになれば、韓国自体の存在がおかしくなりかねませんし、実は戦争状態になることもさることながら、その後の北朝鮮がどうなるかはFX市場にとってはかなり大きな問題です。
このように市場はとにかく戦争が起こるかどうかだけに注目していますが、現実には北朝鮮という国がその後どうなっていくのかが非常に金融市場に重大な影響を与えることになり、とくにドル円はそれ次第で円高にシフトし始めるリスクが高いことも意識しておく必要がありそうです。
(この記事を書いた人:今市太郎)