9月9日をめがけて実験が行われるかと思われた北朝鮮の核実験はこの週末にさっさと実施されてしまい、ドル円もユーロドルも月曜の早朝からギャップをあけた始まりとなっています。
ただ、やはり前回の平日に飛び出したミサイル発射で日本が電車まで止めて大騒ぎした状況に比べると、センチメントはかなり異なるように見えます。
何もできない中国の存在が酷く目立つ状況
photo:毎日新聞
今回の水爆実験は中国との国境近くで粛々と実施されてしまい、これまで隣国として一定の睨みを効かせて来たはずの中国・習近平は完全に馬鹿にされた存在となってしまっています。
10月18日には共産党大会を控え、問題はできるだけ表面化させたくない中国指導部にとっては、北朝鮮は余計な存在になってきていることがわかります。
ただ、足元では中国はインドとも一触即発の状況で東西の国境で戦争をするわけにもいかず、結局米国と強調して北朝鮮の兵糧攻めを進めるぐらいしか手がないようです。
トランプも基本は経済制裁を遂行か
トランプ大統領は「軍事的制裁も辞さず」といったプロレスのリングパフォーマンスのようなことは口にしていますが、基本は経済制裁で北朝鮮の動きを封じ込める方法をとることは間違いないものと思われ、勢いよくギャップダウンしたFXの相場がこのままどこまで下押しになるのかが注目されます。
先週から何度か書いていますが、ミサイルにしても核実験にしても決定的事象が起きてから先は西側諸国の対応がどうなるかが次なる市場へのインパクトになるわけで、そこにたいした対応がないとなれば下げた相場はそのまま下落を維持できず、投機主体ですから反対売買が出れば簡単に「ショートカバー」が示現することにも注意が必要ですし、ギャップを埋めに行く動きがでるのもそれほど時間がかからない可能性があります。
ここからはきわめて高度な政治の話になりますが、周辺の各国は別に北朝鮮を民主化してしまいたいと思っていないようで、ほとんど2500万人ほどのほとんどホームレスに近いような国民に多大なコストをかけて、資本主義国の仲間入りをさせようとは誰も思っていない点も北朝鮮攻めに大きく影響しているように思われます。
本来は金正恩だけいなくなって、細々とその体制を維持して隣国に迷惑をかけないようにしてもらうのがベストな解決法のようで、つねに内部クーデターを画策して首の挿げ替えを行うことが話題になるのも、こうした背景が色濃く残っているからであろうと思われます。
米国が休場で余韻は明日まで残るか
前回と異なるのは米国が休日でお休みであることで、NYタイム以降の巻き戻しのような動きは当然でてきませんから、ロンドンタイムに再度下押しがぶり返さない限りは意外に落ち着いた動きになることも予想されます。
ただ、建国記念日は9月9日ですからここから何かさらにネガティブなイベントが起きる可能性は十分に残されており、たとえ相場が一定の戻りを示現することになったとしてもドル円なら無闇にロングのポジションを放置しておくのは少なくとも来週はじめまでは危険な状況です。
本来水爆実験はかなり由々しき問題ではありますが、FX市場にとってみると感情のない「アルゴリズム」だけは毎度思い切り売りで動くものの、相場全体は相当北朝鮮に慣れてくることから大きく下げなくなることも想定しておきませんとショートだけしていれば儲かるという単純な相場にはならなくなりそうです。
今週は7日にECB理事会も開催されますので、その結果はユーロドルにもドル円にも色濃くでてくることが予想され、北朝鮮関連のリスクのロジックだけではFX相場が動かないことも考えなくてはなりません。
(この記事を書いた人:今市太郎)