いよいよ9月9日は「北朝鮮建国記念日」ということで、事前の金委員長発言でもわかるとおり、この日に合わせて今週またなにか北朝鮮がしでかすことになるのはほぼ間違いのないことのようです。
ただし、それがグアム島沖までミサイルを飛ばすことなのか核実験の続きを完結させることなのかははっきりとはわかりませんが、前回のミサイル発射騒動での日米温度差とそれに連動するかのような金融市場の反応の違いを見ていますと、どうも日本人の感覚だけでマーケットを予想していしまうと大きな間違いを冒すことになりかねない点が見えてきます。
米国は簡単に戦争しない
まず米国にとって足元でもっとも重要なのは北朝鮮と立ち向かうことよりも被害甚大な「ハリケーン・ハービー」対策で、来年の中間選挙でそのまま政権の対応が票につながるだけに、遠い北朝鮮のことでいきり立っている暇はないのが実情のようです。
特に米国の領土に明確にミサイルが着弾する事態にならないかぎり、トランプは公式に怒る態度は見せているものの、日本などが危機感を募らせているのとはかなり様子が異なるのは間違いない状況で、背後にはロシアもいて隣国が中国という複雑な事情をかかえる北朝鮮を米国がすぐに攻撃して戦争状態にのめりこむことはそう簡単にはなさそうな状況が示現しつつあります。
日米首脳の電話会談でも北朝鮮情勢について一致しているかのような話がでてきていますが、実態はかなり異なっているとみたほうがよさそうです。
政治的にミサイルを利用しようとする安倍政権
むしろこのミサイル騒動をうまく政治的に利用していきたいと考えているのは、安倍政権だけのご様子で確かにこの報道一色になると加計学園の問題の報道ノイズも払拭されますから、政権としては非常に都合のいい材料になっているようです。
しかしミサイル発射の前に官邸に首相が宿泊していたことから、「発射のタイミングを知っていたのではないか」との追求を受けたりする始末で、必ずしもうまく政治に利用できているとはいえない状況です。
できの悪いJアラートが鳴り響いたことで株とドル円を大きく押し下げたことは間違いありませんが、FX市場の場合米国の時間帯になるとまるで様変わりの動きになったこともよく覚えておく必要がありそうで、国内の状況だけ見ていますとこのあたりを見誤る可能性が高まりそうです。
29日の場合はロンドン勢が改めてドル円の下押しに加担することとなりましたが、次回何かが起きたときに同じ動きになるかどうかは微妙な状況といえそうです。
日本をミサイルが飛び越えるだけなら一時的円高か
9日にむけて何が起きるのかははっきりわかりませんが、またミサイルがどこかの航海上に着弾する程度ですとまた一瞬円高になるものの、前回のように108円台に下落してNYタイム以降に戻る可能性は高くなりそうです。
あとは着弾の場所と被害の状況によって「アルゴリズム」の初動とは異なる動きがでることに注意が必要になりそうで、よほどのことがないかぎり108円を割ることもなさそうな状況になっています。
とはいえ、個人的な経験でいいますと29日109.350円あたりでなぜか早朝5時前後にショートをしておいたのがなんということもなく95銭ぐらい下げて取れたのはかなりラッキーな気分になれましたので、高値でショートを一応仕込んでおくというのはひとつの方法になりそうです。
29日のFX相場を体験してみた感想でいいますと、ミサイルの場合には次が続きませんから、FX市場で相場がかなり下落するとまた戻る時間がありますので、ずっとポジションを持ち続けるのではなく適度などころでリカクをさせながら回転させて、また市場が戻りを売りはじめたらそれに乗るといった臨機応変な対応が必要になります。
うまくやれば往復とることもできますが、自信がない場合はあくまで底値で拾うなり戻りだけを売るなりに徹してみるのもひとつの手といえます。
いずれにしても米国本土やその領土が危険にさらされない限り、日本政府が口にするような危機的状況と世界はとらえていないということだけは十分に意識したほうがよさそうなここからの1週間です。
(この記事を書いた人:今市太郎)