アメリカの休暇明けは議会のバケーション明けとなる9/5からになります。その前の第一金曜日に「雇用統計」の発表があるのは恒例のことです。
今回の注目点というのは、その新規雇用人数ではなく、いつも言うように労働参加率や賃金の上昇率になるのです。しかし、この8月は年末に次いで第二の消費月間になります。
つまり、8月には雇用は増えなくてはいけないのですが、工場は逆にお休みになりますので、8月の「雇用統計」は毎年、7月よりは若干落ちる傾向にあります。そういう特性を覚えておくことが必要になります。
そして注目の賃金上昇になりますが、小売売上は上昇していますが、物価は上昇をしていません。ここの解釈の仕方が問題になりますが、基本的には物価が上昇をしなければ多くの賃金上昇は望むことはできません。
各連銀の賃金指数もあまり良いものでもありません。「前月比0.2プラス、年率2.6」という数字には多少、疑問をもっています。
ジャクソンホール
あれだけ注目された「ジャクソンホール」になりますが、まともな記事が日本語にありません。英語は苦手なのですが、仕方なくWSJ、FTまで行かなくてはいけませんので非常に面倒なものです。日本にも数記事掲載されていますが、全文の掲載がないので信用はできません。
ともかく、こういった海外の要人の講演や発言は全文を読まないと事実を捻じ曲げられるということを覚えておくとよいでしょう。
今までに何度も間違いの記事を指摘しましたが、この発言がなんでこのような解釈になるのかよくわからないことがよくあります。たとえば、「イエレン」が利上げをしないと明言しているのに、サプライズ利上げがあるとか騒いでいるアホな新聞、マスコミはたくさんあります。
そういった意味で日本の新聞社なんか全く信用ができないことを重々、承知するべきです。
結局、イエレンは「金融機関に対するドットフランク法廃案、改正に対して反対をしている」という講演内容だったのですが、これに触れている日本の新聞社は皆無、いったい何を現地まで行って取材をしているのか本当に不思議になります。この問題は「イエレンの進退」がかかっていることになります。
トランプ対イエレンの構図
先ず、イエレンは今年で任期であって、その進退が注目をされているのですが、本人はおそらく辞めたがっています。この辞めたいとにおわせていることが評論家諸氏の退任と予想する根拠になるのですが、一方でトランプはイエレンを留任させたいのは間違いないと思います。
なぜなら、彼女はトランプにない、国際協調の術を持っているからトランプが慰留することは間違いないと思います、というのが前回までの論旨でした。
しかし、今回、イエレンは、トランプが金融機関に対しての規制撤廃推進に対して、異を唱えたということになります。トランプは不動産業界出身で、その融資の縛りがきついことに不満を感じていることは確かで、しかも共和党はウォール街を支持者につけていますので、当然「金融規制撤廃、緩和」には大賛成なのです。
イエレンは具体的な例証をあげてジャクソンホールで反対したのです。つまり「トランプVSイエレン」の喧嘩が勃発したのです。トランプは自分のわがままを通すようなイメージで、実際、選挙中はイエレンをこき下ろしたのですが、実際は就任してその職務の遂行に信用を置いたのが実際のところです。
トランプは何といっても、ウォートンを本人によると主席で卒業しているのですから頭が悪いわけではありません。みなさんよりは数倍、頭がいいと考えるべきで、決してバカではありません。
規制を続けた場合と辞めた場合の果実のどちらが大きいかを天秤にかけて判断すると思います。その判断の依拠というのは「自分が次期も大統領を続けられるか否か」が判断基準です。
現時点で、トランプが規制撤廃か推進、どちらを取るかはわかりませんが、データを携えて反論したイエレンの意見を支持するのが常識的判断です。でも、その判断の基準は、自身が次期も大統領を続けることができるか、否かになりますのでわかりません。
バノンが政権内にいればある程度わかりやすいのですが、そのアメリカファースト組が放逐されていますので、今回はこの勝利がイエレン、トランプのどちらが取るかはわかりません。
でも、ヒントはコーンが年内に税制改革は終えるだろうと、言っているので、かんたんな話、ゲーリーコーンは、次期FRB議長に意欲満々ということはわかります。現時点で「イエレンはクビ」という方に賭けるほうが賢明のように思います。
ともかく、債務上限問題も無事通過したら、コーン次期FRB議長説が有力になります。参考までに、議会トップは債務上限問題が無事通過すると明言しているのに、どうなるかわからない、とかいう専門家、マスコミはアホである、としかいいようがありません。
なぜ、そのようなことを報道し、言うのか理解できないし、トランプをアホという前に自分の頭がバカであることを認識したほうがよろしいと思います。ジャクソンホール後にユーロが上伸したのは、単にドル安になったからだと思います。
今週のドル円、ときどきユーロドル
何度もいうように、今のドル円は現時点で「極端に円安になるような場面があれば円高」になります。その進捗はゆっくり、ゆっくりと進めなければならず、大きく円安になれば円高方向に向かうと思います。
つまり、4-7月期は逆張りだったわけですが、この8-10月期は円安方向に向かうための準備をしていると思えば、チャートの形が4-7月期と同じとなるわけがないのです。いわゆる、「天井3日、底100日」のような相場形成をすると思えばいいでしょう。
つまり、底練り状況がいつまで続くかわかりませんが、気が付いたら爆発的な円安になっていることをイメージしています。もちろんドル安なのですからドル安、円安であれば自動的にユーロは高くなります。
ユーロ高の目安というのはドイツの自動車業界の業績が低迷するまで、と考えればいいのであって、7-9月の決算が出るのは10月ですからその辺までは円安だろうなと思うわけです。その頃にはアメリカの物価もある程度上昇することでしょう。
(この記事を書いた人:角野 實)