週明けのNY市場は前週に引き続きぱっとしない相場展開が続いていますが、NYダウはかろうじて続落だけは回避している状況であるものの、決して強い状況ではなく、また北朝鮮とトランプ次第で相場が下落するリスクを背負っています。
ところで、いよいよトランプ政権は「発足から8ヶ月目」にして大きな正念場にさしかかってきているようで、このままではトランプ相場の第二幕は「大幅な巻き戻し相場」になることが予想されはじめています。
予想以上に何もできないトランプ政権
既存の既得権益者をことごとく排除し”米国だけよければそれでいい”というこれまでとまったく異なる政策を打ち出そうとしてきたトランプ政権ですから、政策が簡単に実行できないのはご本人もあらかじめある程度は覚悟してきたでしょう。
しかし、発足から8ヶ月で実行に移せたのは「TPP」からの離脱だけで、ほとんどのことが動いておらず、政権スタート時の重要なメンバーまで更迭することになったことでトランプ政権の屋台骨が早くも揺らぎ始めている状況です。
まずオバマケアの見直しは、オバマケア自体がもつ大きな問題とともに財政負担の軽減という目標も絡んでまったくうまく調整ができていません。
これはひとえに政策企画立案スタッフの欠如がもたらしているものとも言えますが、議会の反対にあっていると言えばそれまでですが、想像以上にうまくいっていません。
このオバマケアの改定に手をつけられないことから、減税の原資を創出できない上、当初大幅減税の原資として投入するとピーターナヴァロやウィルバーロスが試算した「国境税」も導入には至っておらず、事実上減税案は棚上げ状態に陥っているようです。
しかもその骨子を考えているのがNECのゲーリーコーンということで、先週はこのコーン議長の辞任が噂されて株もFX相場も大きく下押しする結果となりました。
政権が異例の留任を発表して事なきをえましたが、そもそもコーンはFRB次期議長にも名前が挙がっており、FRB議長に移動したら誰が現在の枠組みを考えるのかというかなりお寒い状況が継続中です。
バノンが去ったことで結局軍産複合体の巻き戻しになるか
”米国だけよければそれでいい”というこれまでにないような閉鎖主義のトーン&マナーは影の大統領と呼ばれてきた「スティーブンバノン」が醸成してきただけに、バノンの更迭でこの流れは大きく後退することが予想されはじめています。
他国のことには首を突っ込まないとか、人種差別的な発言が飛び出す背景にはバノンの考え方が根強くあったからだという指摘もあり、バノン放逐後のトランプ政権はまともになるのではないかという期待もあるようですが、北朝鮮攻撃を大きくけん制してきたのもバノンであり、結果この政権はネオコンの巻き戻しにあって結構普通の政権へと回帰する可能性もではじめています。
口先だけはいろいろ言うものの何もしないトランプの手法も、いよいよ通用しなくなる可能性がでてきているというわけです。
単なるネオコン巻き戻し政権になれば市場期待は大幅剥落
ただ、「普通の政権になります。はいそうですか。」とはいかないのが金融市場で、これまで夏休み明けには減税の詳細案が登場し、「ドッドフランク法」の廃止さえ期待してきた金融市場はトランプ政権を大きく見限ることになり、相場の大幅な巻き戻しが危惧されます。
FX市場で言えばトランプ政権誕生時のドル円101円や株価でいえば日経平均1万7000円台までの巻き戻しがでると相当なインパクトになることは間違いなく、どうもこの秋の相場はこうしたリスクにも対応していかなくてはならない状況になりそうです。
様子の変さ加減では国内の安倍政権も負けてはいませんが、政権がまともに機能しなくなるという点ではトランプ政権のリスクはそれを大幅に上回るもので、見方によっては北朝鮮のリスク異常の問題をかかえはじめているようです。
これと北朝鮮からの外的リスクが複雑に絡みあっているわけですから、相場が難しいのも無理はない状況といえます。
(この記事を書いた人:今市太郎)