不思議なものでメディアに話題が登場しなくなると、すっかり影が薄くなったように見えるのがだれあろうトランプ大統領で、直近ではトランプ政策が一体どこまで纏まりつつあるのかがほとんどよくわからない状況に陥り始めています。
オバマケア代替法案採決先送りに市場は嫌気
米共和党上院トップのマコネル院内総務は27日、医療保険制度改革(オバマケア)代替法案について、党内の支持を増やすため、採決を先送りすることを決定しましたが、市場はこれを嫌気してNYダウも大きく下落することとなりました。
なんだまだそんなことをしているのかといった感じですが、オバマ前大統領が長い時間をかけて作ってきたオバマケアの代替案を短期間でまとめるのは至難の業のようで、政策構築スタッフが必ずしも多くないトランプ政権のアキレス腱が見え隠れする状況となっています。
財務省はドッド・フランク法の見直し案を公表したが・・
一方財務省は6月12日、ドッド・フランク法(金融規制改革法)見直しに向けた報告書を公表しています。
ドッド・フランク法は金融危機の再発防止を目的に、オバマ前政権時代の2010年に成立したものですが、これが金融機関に非常に大きなコストを強いているということから100以上の見直しが検討されている状況です。
とくに自己勘定での高リスク取引を規制する「ボルカー・ルール」について、総資産100億ドル以下の金融機関は原則除外する案が示されており、果たしてこれが本当にワークするかが大きな問題になりそうです。
のど元すぎればなんとやらといいますが、「サブプライムローン」で大打撃を受けた金融市場は10年後の足元でまたしても自動車と学生の奨学金のエリアでサブプライムの問題を起こしており、完全に歴史は繰り返す状況となっており、簡単にドッド・フランク法を改訂していいのかという問題が大きく浮上しそうな状況です。
実なこの法律改訂についてはかなりウォール街も米系のファンドも期待しているようで、これが株価を下げないひとつの要素になっているとの味方も広がっています。
野党の民主党はオバマ前政権が築いた同法の改正には強い反対を示していますから、与野党の勢力が拮抗する上院で改正法案が通るメドは立っていないのが現状です。
ムニューシン財務長官によれば法改正は全体の2割程度で残りの8割は規制の変更で対応可能としていますが、もたもたしていると次の株価の大暴落のほうが先にやってきてしまいそうな状況で、これもどこまで実現可能なものなのかについてはかなりの疑問が残るところです。
減税策の具体案は9月に議会提出の見込み
さらに4月26日にごく一部のアウトラインだけ提示されたトランプ公約の減税策ですが、こちらもムニューシン財務長官によれば9月には議会に提示されるとのことです。
ただ、ロシアゲート問題が浮上してから遅々として進んでいないとも言われているだけに取りまとめが越年するようなことになれば、またしても失望売りを招きかねない状況です。
この領域でもまともなスタッフがいないことが徐々に国民にもばれ始めているようで、直近の世論調査でもNo Staffというマイナス評価が加わるようになっており、政権運営は一段と難しくなっていることがわかります。
ロシアゲートの問題はさらに不透明
一時非常に政権リスクが危惧されたロシアゲート問題ですが、こちらのほうはかなり不透明感が増しており、モラー特別検察官を中心とする捜査が一体どのようになっているのかが開示されないことから最近ではほとんど話題に上らない状況です。
このようにトランプが当初提示してきた公約に織り込まれた政策は遅々として進んでおらず、初年度にはできないとしてもある程度のめどが指し示されないとさらに市場の期待が剥落することから相場へのネガティブな影響が危惧されます。
最初は調子がよかったものの、今やトランプのツイートもあまり話題にならなくなっており、ファンド勢の一部が期待するほどの状況ではなくなりつつあることが徐々に詳らかになりつつあります。
(この記事を書いた人:今市太郎)