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27日は「ECBドラギ総裁」の「デフレ圧力はリフレ圧力に変わった」との含みのある発言からユーロドルが急上昇する形となり、いまも底堅い動きが継続中です。既に欧州の債券市場はドラギ発言を受けて下落を強めており、国内の債券市場にも売り圧力がかかる状況となっています。
そもそも通常のスピーチの中で金融政策について総裁が語るというのはかなり異例のことで、それだけに市場は過剰反応しているとも見えますが、前日暴騰したユーロは「ECB」関係筋の発言として「市場は27日のドラギECB総裁の発言を誤解している」という報道が28日の午後9時すぎに飛び出したことから暴落することとなりました。
しかし、その後NYタイムで大きく買い戻されて暴落前の水準を上回るという余分な行って来いの動きも見せることとなり、相当疲弊することとなってしまいました。
FRBが緩和をやめECBも出口に向かえば市場の混乱は必至
既に「FRB」は完全に利上げに加えて「バランスシート」の縮小規模と開始時期まで仄めかしている状況で、明らかに「金融緩和」から金融引き締めへとシフトしようとしていますが、これまで「ECB」と日銀がその肩代わりとして緩和を続けてきたからこそ市場は殆ど平静を保つことができたわけですが、これで「ECB」が本格的な緩和措置からの離脱を明確にした場合にはユーロドルが上昇し債券相場が多少下落するでは済まないぐらいの大きな変動が起こることが予想されます。
もちろん日銀は簡単に緩和をやめるわけにはいかないと思われますが、世界中の「金融緩和」を日本だけが背負っていくこともできないと思われ、「ECB」が実施に出口を口にした段階から相場が大きく崩れることも予想される状況です。
果たして先進国の「中央銀行」間では、こうしたリスクに対してどこまでの認識共有ができているのかが大きな問題になりそうです。
この夏なんとか相場が大幅下落を乗り切ることができたとしても「ECB」の緩和終了は相当な影響をもたらることは必至で、足元の過剰流動性が失われることになれば株式市場からも資金が逃げていくことが予想されるだけにかなり深刻な状況になりそうです。
実際に「ECB」が出口戦略をとりはじめるのは年末以降になるものと思われますが、相場はそれを待たずに癇癪を起こす可能性がかなり高まることになりそうで、いまからかなり心配される状況です。
ユーロ圏にインフレは再来するのか?
世界的に「インフレ」に対するターゲットを設定する「中央銀行」は多くなっていますが、米国の「インフレ」も想定したほど早いペースでは進もうとしていませんし、日本の場合、すでに4年も日銀が緩和措置を継続しても「デフレ」すら脱却できていない状況であり、欧州圏だけが「インフレ」を実現することができるのかどうかにも注目が集まります。
足元ではまたしても原油価格が下落をはじめており、「インフレ」を実現することは想像以上に難しくなってきていますが、「中央銀行」が緩和措置を終焉させればこれまで「中央銀行」主体で進めてきた世界規模でのバブル相場も一気に終焉することになるのが非常に気がかりな状況です。
各国ともに自国や自らの経済圏のことしか考えていないようですが、決して景気はすばらしく回復しているわけではありませんから、まず株式市場に相当なネガティブインパクトが現れることになるでしょうし、場合によってはまた緩和措置を再開させなくてはならないという逆戻りの事態の可能性も残ることになりそうです。
毎回問題になることですが、先進国はそんなに景気が回復しているのでしょうか?どうも各国から登場する経済指標も嘘か本当かいまひとつよくわかりませんし、にわかには信じがたい感じです。
欧州の場合にはドイツが牽引していることからまだ回復の可能性はありますが、米国の場合は、指標はまだら模様から鮮明に悪化を辿っているだけに、先進国の中銀が挙って強気な姿勢を見せるのは非常に違和感を感じる次第です。
(この記事を書いた人:今市太郎)