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ずいぶんと問題を起こしたサミットであったとは痛切に感じます。結局、自由貿易の堅持を示した声明文は出たものの、これは前回も説明したように、トランプ大統領がドル安を容認するか、保護貿易を推進するかの選択を各国首脳に迫った結果になります。
自由貿易を推進するという合意ができたからにはドル安を容認したのであろう、と考えるのが妥当な考えになると思います。
残りの問題、特に環境問題、パリ協定に関してはおそらく、トランプさんが自分のわがままを通し、自身の政権人事さえもまだ確定できないほど遅れているので環境政策に関して自身に都合のよい政策を通すほどの案がない、ということから合意をしないというわがままぶりです。
しかし、ＥＰＡの予算を大幅に削減するという暴挙にも出ていますので一体、何をやりたいのだか、とは思います。安倍首相はトランプさんに対して「環境問題は宝の山ですよ」と諭しましたが聞く耳を持たず、という状態です。本当に認識がないのか、それともお得意のディールなのかはよくわかりません。
言えることは、トランプさん自身は共和党の大統領であり、その母体はウォールストリートと石油業界になります。就任早々にパイプラインの建設を認め、そうそう環境団体から文句を言われたのは記憶に新しいことです。とにかく石油と環境というのは利益が相反することでどちらの言い分をも取り入れることができないということです。
今週の為替相場予定
今週のテーマは何といっても「雇用統計」になるでしょう。各種の数字を追って行きますとそれほど悪い数字は出ないと思います。予想は18.5万人という数字で20万人には届きませんが、先月の数字があまりにも突出していますからある程度の下方修正を行う可能性はあります。
忘れてならないのは、アメリカにいい数字が出れば、アメリカ>日本になり、結局は円高になるということです。指標の発表直後に円安方向に振れると思いますが、その後、円高になるのはいつものパターンです。そのことを忘れないようにしてほしいものです。
またＩＳＭの製造業指数が出ます。この年後半の大きなテーマは貿易です。トランプさんが重視しているのは貿易の不均衡ルールの是正でドル安にしなければ保護貿易を行うと言っているのですからアメリカの貿易赤字や不均衡を証明する数字が出た場合、おそらくトランプさんはツイッターなどでのコメントが増えると思います。
このＩＳＭ製造業指数は、要するにアメリカ国内の製造業を示す指数になるのですからアメリカの輸出が好調か否かを示す数字になるのです。この数字が悪ければ、トランプ砲をまた発動することでしょう。
とにかく、今のトランプさんの重大なテーマは貿易で、その貿易の不均衡を解消することによってアメリカの国内産業を育てることに重点を置いているような気がします。
アメリカの経済自体は好調を、今のところキープをしていますが、製造業の景気が減速して、それに従事する従業員の待遇があまり良くなかった場合、トランプ砲が出ると考えればいいだけの話です。
目先は今後のアメリカ貿易赤字が増えるか否かによって、トランプさんの出方が変わります。貿易、雇用、製造業指数等の指数が大幅に低下した場合は要注意になるでしょう。もちろんきのうも触れましたが、ドル安傾向を促す、中央銀行の政策決定会合も注目です。
リスクオンの考え方
おそらく数週間以内に「リスクオン相場」になると考えています。ドル建てゴールドは上抜けをしました。ゴールドが上抜けというのは、ドル安を暗示しています。
やはり報道の仕方が事実の本質を意図的に隠しているような気がしますし、もしくは無知で理解能力がない、と考えるべきなのでしょうが。この声明文が、意味することを深く考えると、そして報道されるドイツ、メルケル首相の悪態、彼女は文句言いですが、かなり言葉を慎重に選んでいることを勘案すると、相当、怒っています。
常識人のマカロンもそれに追随して彼も何もできないだろう、とは思います。リスクオンに対して、ドイツもフランスもということです。そういう時にアメリカがリーダーシップを取って決定しなければならないのですが、この人望のなさは相当に不安です。
ただ、日本の安倍さんは今後の事態を正確に予想していると思えるのが唯一の救いと思うのです。参考までに、今までの政府、日銀の発表を勘案すると彼らは円高を予想していると思います。
あえてもう一点いうとすれば、サミットが終わった時点でリスクオン相場を言っている方はそんなに居ないということです。むしろこれを読んで私が奇人変人と思うことでしょう。「リーマンショック」の前もそんな感じでしたけどね。
（この記事を書いた人：角野 實）
