今年も4月後半にさしかかっていよいよ本邦機関投資家が動きはじめているようです。すべての投資家が稼動するのは連休明けを待たなくてはなりませんが、その一部は今週あたりから動きを加速し始めている気配です。
この機関投資家は過去20年近く国債だけをベースに投資を行ってきており、大きく外債にシフトしはじめたのはここ2年ぐらいの話と見られていますが、この20年のブランクがかなり様々な問題を抱えることになっているようで、この機関投資家の動きというものはここからの相場では見逃すことのできない存在になりそうです。
本邦勢の外債購入は外貨買いからスタート
企業の「M&A」などの場合には外貨を購入するのではなく外貨で資金調達をしてしまうこともありえますので、単純に買収額分を外貨購入しないケースもあるわけですが、国内の機関投資家でかつ運用資金が円ベースになっている場合には、とにかく外債購入には円をドル転する必要があり、この時期に円が売られてドルが買われるという動きが明確に示現することになります。
今週あたり執拗にドル円が買われたのもこうした機関投資家の動きと見られています。ただ、一口に機関投資家などと呼びますが、生保から地銀まで外債を購入してまわしていくというスキームに長けている人間がほとんど存在しないというのも大きな問題になってきているようです。
というのも90年代後半からすでに外債購入をぱったりやめていることから、運用ノウハウのある人間がどこの企業にも社内に残されていないことが大きく影響しているようで、これがかなりの失敗につながってきているようです。
20年といえば40代だった管理職のエキスパートはすでに定年を迎えていますから、確かに確固たるケイパビリティをもった人材が機関投資家内に存在しないというのはかなり深刻です。
金融庁の検査報道でわかった地銀の外債投資大失敗
「外債購入」といいますが、結局多くの機関投資家が行っているのが、利息がついて安全な米国債投資だといわれます。
しかし昨年から今年にかけて米国債の金利が上昇、つまり価格が大きく下落したことから国内で購入した地銀は軒並み簿価で損失を抱えることとなり、しかも円安時に購入したことから円高による損失を抱えてかなりの地銀が3月までに米国債を売り払ったといわれています。
これは金融庁が緊急で地銀の検査に入るという報道がでたことからかなり明確になったものです。
原資の減った売却代金を円転するためにまたまた円高が進んでしまったこともあるようですが、結局今年もまた価格の落ち着いた米債を購入する以外にはあまり方法が残されておらず、同じようなことが繰り返される可能性が高まりつつあります。
ただ、毎年損失を出すわけにも行きませんから、それなりのリスクヘッジ策を投入してくるところも増えそうな状況です。
円高対策のために為替にヘッジをいれる機関投資家が増加
外債を買ってもまったく為替の円高に対応しないで損失をかかえるだけが「GPIF」であることがここ数年の投資状況でわかってきていますが、さすがに民間の機関投資家はそんなことをしていては商売になりませんので、ここのところ多くの本邦機関投資家勢は為替にヘッジをかける作業をしているケースが目立っているようです。
つまり115円で外債を購入して円高に振れてくると購入額分を円買いヘッジしておくというやり方です。
しかし円安が進み購入価格よりも円安になりはじめると逆にこうしたヘッジは外しておく必要がありますので、機関投資家のドル買いというのは実需的な部分のみならずこのようなヘッジ外しによっても示現することになるようです。
今週ドル円が上昇したところでさらに機関投資家がドル円に買いを入れたのは、このヘッジ外しが結構大きかったのではないかとも見られています。
外債の場合には債券価格と為替という二つのリスクをさばいていく必要がありますから、確かに利益を出すにはそれなりのノウハウが必要となることは間違いありませんが、「ゼロ金利」や「マイナス金利」が続く国内債では運用が困難な本邦機関投資家は嫌でも外債投資を継続せざるをえず、リスクヘッジのための外貨の売買もここからは結構激しいものになる可能性て出てきているというわけです。
日常的にFXをやっていますとこうした機関投資家がどこで動いてくるのかはまったく判別不能ですが、連休明けにはさらに大きな動きがでることも予想されることから、意外にドル円が一時的にせよ底堅くなることも想定しておく必要がありそうですが、ヘッジの円買いがでれば上昇は抑えられるというなかなか微妙な相場状況が展開しそうです。
(この記事を書いた人:今市太郎)