ドル円はずっと相場全体が下落方向をにらんで動いてきていましたが、ここへ来てかなりショートが増えてきていることもあるようで、ほとんど下がらないことから一旦上に上がる動きが出そうな気配です。
決して大きく上昇トレンドがではじめているわけではないのですが、ポジションの傾きが一方に大きくなりすぎるとこうした動きがでることがあるため注意が必要になります。
本来一定のフローが続かないとトレンドは発生しない
足元の相場はあくまで投機筋と個人投資家主体で、実需の明確な動きや機関投資家の一方向へのフローがほとんど存在しないことから、相場の参加者の多くが下落を意識してショートを溜め込みすぎてしまいますと、そこから相場が下がらないという状況が作り出されてしまいます。
意地の悪いロンドン勢やNY勢は、東京タイムでショートが溜まりすぎていると判断すると上方向に買い上げる動きをとりますから、初動は「インターバンク」の買いであってもその後の相場の上昇は、積極的な買いではなくストップロスをつけた相場の状況であることがほとんどです。
一定の高値のストップをつけて買いあがった相場は、さらに買いを入れる投資家が不在となるため高値の領域で下げることもなく浮遊することが多くなります。
昨日の東京タイムからNYタイムにむけての相場展開はまさにこの類のもので、109円30銭から40銭にあったと思われるストップロスをつけたあとは下がることもないけれど、さらに買いあがるわけでもない浮遊を続けることになりました。
市場の判断を鈍らせるミセスワタナベの無損切り売買法
ショートが溜まっていて、相場が上方向に持ち上げられると一定のストップロスがついてさらに上昇するというパターンは、ある意味、誰でも想像のつく動きということになるわけですが、本邦の個人投資家はこうしたFX相場の規定演技とは異なる動きをするため、相場状況は非常にわかりにくくなります。
たとえば109円台中盤に近いところまで戻したドル円相場でも109円以下のところ、とくに108円台後半で作ってしまったショートを国内の個人投資家ははぜか損切りせずにそのまま持ち続けることが多くなります。
同様に110円レベルで岩盤の買いがあるとのウワサを後ろ盾にして買いを入れて相場の下落でも損切りをせずにじっと我慢をしている本邦個人投資家もかなり存在するようです。
ここからドル円相場が上昇しはじめて110円に近づく、もしくは110円超えますと、こうした塩漬け投資家のやれやれ売りがではじめてくることから、今後は上値が重くなってそれ以上は上がらないという事態に追い込まれることになります。
世界的にも損切りをしないで持ちこたえる「ミセスワタナベ」の売買手法というのはかなり珍しいものとして扱われているようですが、ドル円に関してはこのような国内の個人投資家の動きがかなり相場に影響するようになることから、上がらないとか下がらないという停滞状況がでてきた場合には、結構個人投資家の動きが原因となっていることが多いようです。
投機筋や「インターバンク」はどこまでも損切りをせずにポジションを維持するといったようなことはしませんから、相場がある程度上昇すればショートはきれいになくなります。
また、大幅下落するとロングはすべて切らされることになるので、その後はあらためてすっきり動くことになりやすいのですが、本邦勢の個人投資家が深く関与するドル円相場には影にかくれたポジション保有があることから、妙に動きが重くなることがあるという点だけは、しっかり理解しておく必要がありそうです。
相場の後講釈では「北朝鮮リスク」で売られすぎたので買い戻しが入ったなどと書かれることが多くなりますが、実際はショートが溜まっているときに作為的に上方向に買い上げる悪意の市場参加者がいると損切りが次々とついて相場がたくり上げられているだけのケースが多いのが実情です。
ここからドル円は、はからずもさらに上昇する可能性がではじめていますが、上値を個人投資家のロング解消売りがでればまたしてもキャップされることになり、ここからどんどん上昇することも期待しにくい状況になってきています。
当面は「フランスの大統領選挙」の結果待ちで、大きな動きがでる可能性があるかどうかということになりそうです。
(この記事を書いた人:今市太郎)