このコラムでもご紹介したことがある米国国家安全保障会議の「スティーブ・バノン」首席戦略官・上級発表し波紋が広がっています。
もちろん発表はトランプの口から行われましたが、裏で強烈な主導権争いの抗争が繰り広げられていたことは間違いなく、政権発足時早々に「マイケル・フリン」が辞任を余儀なくされた後任としてこのNSCに入り込んだマクマスター陸軍中将との決死の戦いの末、バノンはNSCから追い出されることになったようです。
この「スティーブン・バノン」は、マーサー財団から多額の資金提供を受けてまんまとトランプ政権に潜りこむことに成功した人物であり、トランプ政権発足直後の入国禁止の大統領令の絵を描いたのもバノンで、影の大統領とさえ言われたにもかかわらず、政権発足から2ヶ月ちょっとで姿を消すことになったのは、いかにこの政権内部で権力闘争が繰り広げられているかを如実に物語る証拠ともいえます。
一説には、バノンは解任されてもまだNSCには大きな影響力があるとも囁かれていますが、それならなぜ解任するの?という答えにはなっておらず、明らかに政権内のパワーバランスが変わりつつあることを示唆しているようです。
グローバリストが主導権を握るのか?
トランプ政権内ではこの間、保護主義的な貿易戦争戦略をめぐって内紛が起きているとする報道が随所で見られ、具体的には「ピーター・ナバロ」国家通商会議議長や「スティーブ・バノン」主席戦略官と、「ゲイリー・コーン」国家経済会議委員長や「スティーブ・ムニューシン」財務長官らの路線対立が表面化してきましたが、その一角を担うバノンが表面上政権から姿を消したことは、この綱引きにも大きな影響を与えることはどうやら間違いがなさそうな状況です。
NSCは再編されるとはされているものの、シリアや北朝鮮、イランなど喫急の課題への対応をまとめる体制はできていないとの報道もあり、足元ではかなりリスクが高まっている北朝鮮への空爆も本当にできるのかどうかが大きな焦点になりそうです。
政権内でグローバリストと呼ばれる「ゴールドマンサックス」出身者がイニシアチブを握るようになれば、トランプが当初声高に謳ってきた超保護主義的政策もかなり後退する可能性があり、果たしてどこまでの政策が現実化するのかが注目されます。
米中会談後には米国の矛先は一気に日本に向かう可能性も
いよいよマイアミで開催される米中首脳会談も、中国がおいそれと米国の言うことなど聞かないことが再確認されるだけで、たいした進展が図られるとは思えない状況で、この会談が終了すれば、いよいよ米国の通商問題における矛先は日本に一心に向けられることになりそうな気配です。
もっとも先進国の中ではものを言いやすい日本を叩いて、為替でもケチをつけて自主的な政策を引き出すことができれば、一応の体面が保たれることになりますから、18日から実施される日米経済対話では想像以上に厳しい要求を突きつけられることになるのではないでしょうか。
こうなるとドル円は簡単にドル高には動けなくなるのはもはや間違いない状況で、年初の118.500円レベルが今年の最高値となる可能性すらでてきています。
おそらく米国は「WTO」にひっかからないためにも日本から自主的な政策を引き出すつもりでしょうから、ここからはドル高円安になると日本の金融当局から介入の話が飛び出すことにもなりかねず、ドル円はかなり政治的に上値を抑えられる時間帯に入ってくることになりそうです。
トランプ政権はまだ発足後100日も経過していませんが、随所に綻びが目立ち始めており、特に政策面では市場の期待が大規模に剥落するまでそれほど長い時間はかからなそうな雰囲気になってきています。
(この記事を書いた人:今市太郎)