読み込み中...
Photo Reuters
英国メイ首相は正式に29日に「EU離脱」手続きを発動することを発表し、ポンドが動きはじめています。初動はポンド売りとなっていますが、昨年の投票後の動きから考えればこのまま向こう2年間ポンドが下落傾向になるとも考えられず、ここからの動きが気になるところです。
英国側は有利な通商協定を模索、ＥＵ側は離脱で英国に利益が生じないことを目指すとされていますが、当のEU自体フランスの大統領選挙の結果次第では自らの存在が危うくなる可能性もあり、「G20」でもアメリカが主張する保護主義をドイツは突き破ることが出来ずに終わっており、むしろ主力の枠組みはEUから離脱する英国のほうに移りつつある気もしてくるとこでここからのポンドの動きが気になるところです。
昨年のBREXIT騒動の後を思えばポンド安と決め付けるのは尚早
英国のEU離脱はここから2年あまりの時間をかけて行われる、かなり長いマイルストーンをこなす作業になりますが、現状では相変わらずEUから離脱することのほうがデメリットが多いように見えるものの、ここから先のEUがどのような姿に変貌するかによっては英国の離脱はそれほど大きな問題にはならない可能性もでてくることになります。
今のところ一進一退のフランスの大統領選挙ですが、ルペンが本当に指名されることになり、フランスがEUから離脱することを勧めることになれば、そもそものEUという仕組みやユーロという共通通貨のコンセプトを考え出した張本人のフランスが消えうせることになるわけです。
残されたEUがそのままやっていくのか、とうとうばらばらになるのかはまったくわからない状況で、足もとでは猛烈なデメリットに見えるEUをシングルマーケットとしてアクセスくる権利すらこの先は色あせたインセンティブになりかねない状況です。
こうしてみますとポンドも一方的にここから売られて、ポンド安が長期に継続するかどうかはまだまだわからないところがあり、決めうちをしない取引が重要になってきそうです。
スコットランドの独立住民投票を押さえ込む動きも
また、メイ首相は3月16日2018年から19年の間に今回で2回目となる「スコットランド独立」の是非を問う住民投票を求めているスコットランド自治政府首相での「ニコラ・スタージョン氏」の要求を拒否する考えを示し、今はまだその時期ではないと押さえ込む姿勢を見せています。
UKのEU離脱はUK自体の崩壊や分裂を招くのではないかという危惧の念が常に市場には渦巻いていますが、それを無理やり押さえ込む姿勢に出ているメイ首相はキャメロンとはかなり異なる強い意志をもった存在であり、ここからのメイ首相の政権運営と対EU交渉の手腕も注目されることになりそうです。
足もとでは世界的に「保守主義」が台頭し、ごねたものが得をするような状況が強まっていますが、米国とは別の形で自らの地位を守ろうとする英国のやり方は結果的にかなりのメリットをもたらす可能性もまだまだ残っており、その面からみてもポンドが単純に売りとはならない状況がやってくるのかも知れません。
英国民の懸念は景気問題
足もとでははなり改善が進んでいる英国経済ですが、英国民自身が気にしているのはテロや移民の問題よりも景気であるとする調査結果が2月にニールセンから発表されており、EU離脱でもっとも国民が気にしているのはなにより景気であることが明らかになっています。
このあたりもメイ首相がどのようにして不安を払拭していくことになるのかが大きなポイントとなりそうですが、ポンド安はここまでかなり英国株式市場への資金流入に貢献してきており、国民はポンド安による物価高にかなり苦しみ始めているものの経済は他国と比較してもかなり順調というなかなかアンバランスな状況が継続しています。
このあたりもポンドにとっては支援材料として効きそうな状況で、今後の動きを粒さにチェックすることが必要です。
（この記事を書いた人：今市太郎）
