米国は東部地域が季節はずれの大雪のようで14日に予定されていた「メルケル・トランプ会談」は17日に延期となりましたが、この会談、事前に双方がお互いを批判してきただけにどのような収まりがつくのかが非常に注目されることになりそうです。
日米の従属的な会談のようにはまったくならない気配濃厚
今回「メルケル・トランプ」が直接会って話しをするのは始めての機会となりますが、トランプはこれまでメルケルの移民政策を名指しで批判してきていますし、メルケルもトランプの移民に関する大統領令を明確に批判しています。
これだけでもかなりクリティカルな状況ですが、今回ドイツは米国の国境税の導入による税制改革が行われることになれば「WTO」に違反を訴えるとしていますし、さらに報復措置として米国系企業に一段と高い関税を課す報復措置を検討しているとのことで、会った最初だけはにこやかかもしれませんが、会談自身は一触即発のかなり厳しいものになることは確実のようです。
右翼小学校へ婦人の関与の話になると、激高しながらもトランプの前では終始「借りてきた猫」のようにご機嫌を伺って貢物を差し出すだけの、どこかの総理大臣とは180度異なるメルケルの対応で果たしてどのような話し合いになるのかが大きな関心を集めることになりそうです。
米国はWTO脱退も検討
米国の動きを黙ってみていない物言うメルケルも凄まじい存在ですが、トランプの国境税調整は様々な面で「WTO」に違反する恐れがあり、ドイツから提訴されれれば米国は公的に弱い立場に追いやられる可能性が高まります。
まず、国内産品には課せられていない税を課しているという点で内国民待遇原則(GATT3条2項)違反となりますし、特定国からの輸入品にのみ国境税が課せられれば最恵国待遇原則違反(GATT1条1項)にもなり、さらに国内で生産する事業者が輸出した場合法人税を免除するといった動きになれば、輸出を条件とした免税であることから、補助金協定3条1項(a)によって禁止された補助金に相当し、違反となる可能性は明確です。
しかしトランプ政権は恐ろしいことに、それなら「WTO」を脱退すればいいと考えているわけですから、一昔前のソビエトのような対応であり「WTO」からの勧告には従わず国内法を優先することを示唆していますから話しがかみ合うとは思えない状況です。
今回の会談で争点が鮮明になれば、それなりに為替に与える影響もでてくることになりますし、そもそも同時期に開催されている「G20」の声明などにどのような影響を及ぼすことになるのかも注目されるところです。
移民の件で大きく国民からの支持を失ったメルケルにとっては千載一遇の人気回復の機会であるだけに、この対立は真っ向勝負になるリスクがかなり高まりつつあります。
ドイツは国境税が設定された場合にはドイツ企業あ米国への輸出に対して支払った税額を控除できる仕組みをつくり競争で不利になる部分を保管する策を実施する可能性も視野に入れており、国境税なるものが導入されてもトランプ政権が考えるようにドイツからの輸入が減るかどうかもよくわからない状況になってきています。
国境税導入による税収アップに関しては「ピーターナヴァロ」と「ウィルバーロス」が裏で糸を引いているわけですが、税収さえ増えればよしとするのか、物理的な「貿易赤字」を減少させることを大きな目的とするのかによって今後の対応は変わってくることになり、この点についても市場の大きな関心を集めることは必至です。
20世紀初頭ならこうした各国間の経済対立がおこれば即戦争であっただけに21世紀の保護主義に世界がどのような制裁を加えていくことになるのかによっては、為替への影響もかなりこれまでと異なるものになることが予想され、この会談の結果がどう出てくることになるのかをとにかく待ちたいところです。
(この記事を書いた人:今市太郎)