Photo BORIS HORVAT/AGENCE FRANCE-PRESS
米国のトランプ演説、3月「FOMC」の見通しといった大きなイベントの中身が見えてきた金融市場ではいよいよフランスの大統領に注目が集まりつつあり、ひとつの動きが顕在化しつつあります。
CDS市場で跳ね上がるフランスのプレミアム
ギリシャの「デフォルト」騒動が勃発した2010年ごろには南欧諸国のCDS・クレジッドデフォルトスワップ、つまり国債の「デフォルト」リスク取引のプレミアムが軒並み高騰したことが思い出されますが、今フランスのこのプレミアムが急激に跳ね上がりつつあります。
CDSは平たく言えば債権の保険ともいうべきもので、「デフォルト」といったもしものときに債券に保険をかけるものとして利用されている仕組みです。
米証券保管振替機関(DTCC)のデータによりますと、フランス国債を対象としたCDSの今年1月初めからの平均週間取引額は7億8400万ドル(約883億6000万円)でシティグループによれば、2016年は3億7800万ドルですから倍増していることがわかります。
またIHSマークイットによると、ルペン氏勝利への懸念が高まるにつれ、フランス国債の5年物CDSプレミアム(保証料)は上昇し、想定元本1000万ドルに対する年間保証料は22日時点で7万1000ドルと年初の3万8000ドルから大きく上昇している状況です。
為替相場では大統領候補の誰が出馬するかしないかをめぐってユーロが買われたり売られたりしていますが、債券市場では確実にルペンが大統領になるとともにEU離脱からフランスフランに回帰した場合のリスクが高まっていることを示しています。
ルペン勝利だからいきなりEU離脱とはならない
フランスの場合、仮にルペン大統領が誕生しても英国と違って国民投票一発ですべてが覆るというものではなく議会を通して離脱を決定するプロセスが出来ていることからルペン勝利で即EU離脱というわけにはいかないいくつものハードルが用意されていることは事実です。
しかし、英国のEU離脱、トランプ大統領の出現などまさかと思われたことが2度も続いているわけですから、3度目があると思う投資家が多いのは事実のようで、やはり個人投資家もある程度「FREXIT」という事態が起きる可能性をしっかり認識しておく必要がありそうです。
誰が勝利するかの事前予想に一喜一憂するのはほとんど無意味
昨年の「BREXIT」の投票や米国の大統領選挙の結果を考えますと、事前の世論調査や下馬評を当てにして相場を決め打ちすることがいかにリスキーであり、しかも意味のないことかを身をもって理解した個人投資家の方も多かったと思います。
今回のフランス大統領選挙もそれに近いものがあり、1回目で過半数がとれなかった候補が2回目に決戦投票をする形態となりますと、ルペンが勝利する可能性は確かにかなり高まることになりそうです。
英国のEU離脱と違ってフランスがEUを離脱するということは、そもそものEUの設立を考えた国の離脱になりますからEUというコンセプトの崩壊に繋がることは間違いなく、とくにユーロというのはフランスが考案したものですから、そのフランスが「フランスフラン」に逆戻りするとなれば事実上ユーロも継続できなくなる可能性が高まります。
したがって「FREXIT」についてはユーロ崩壊につながり、それがどういう形に進展するのかを考えておく必要がでてくることになりそうです。
市場ではフランスがフランスフランに戻ることを決めたとたんに「デフォルト」になるとの見方が強まっており、一時的には相当なインパクとがもたらされることを覚悟する必要がありそうです。
一方、ここへ来てドイツ連邦銀行が「ECB」の非伝統的制作によって生じる損失額について推計を示す見通しであるとの報道が飛び出して市場で大きな話題になりつつあります。
今後「ECB」によりまき戻し利上げが行われれば損失を被るなどという話を加盟国の「中央銀行」が公然と口にし始めること自体、EUとしての足並みを大きく乱す不協和音以外の何者でもない話で、とうとうドイツはEUを見限る覚悟がでてきているのかと勘ぐる見方が強まるのも無理はない状況です。
またドイツは世界各国に委託している金を今年中に自国に集める作業を始めているようで、どうも不測の事態に備えている可能性が高まっています。
どうやらフランス大統領選から先の動きについてはいくつかのシナリオを想定して、どれが現実のものになってもしっかり対応できる準備をしておくことが重要になりそうです。ポイントは大方の見方とまったく反対のことに備えるということではないでしょうか。
(この記事を書いた人:今市太郎)