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ようやく議会における指名承認がおりて実務の世界に登場してきた米財務長官の「ムニューチン氏」ですが、当初は歴代の財務長官と同様に規定演技として強いドルは、国益であるといったような当たり前の話をしていたことから一旦ドル円が上昇するような場面もありました。
しかし、一昨日の発言では一転してドル高には問題があると具体的な指摘をする発言しはじめており、しかも金利政策に関しても、おそらく長期に渡り低金利が続くだろうと「FRB」の利上げが簡単には行われないといった見通しを口にし、ドル円相場は112円台の円高へとシフトする動きが明確になりました。
しかもムニューチン氏は税制改革の骨子を8月の議会終了前までには提出したいといった見通しを述べており、暗に28日のトランプ議会演説では精密な減税の内容が登場しないことを匂わせており、相場の状況は大きく変化しはじめています。
ドル高けん制と低金利継続はドル円の上昇を大きく阻むものであるたけに、この調子で3月の「G7」会合で麻生大臣と接触することがあれば、具体的な要望として米国から円安に関する発言が出る可能性もでてきています。
トランプ議会演説でドル高円安期待は危険か・・
こうなると気になるのが28日のトランプ大統領の上下両院議会演説ですが、減税案に関してアウトラインは演説に登場しても詳細まで詰めたものがでてくると期待するのはかなり難しそうで、詳細先送り感の高いものとなる可能性が高まっています。
減税にあたってはその原資を確保することが必要となるため、国境税の問題やオバマケアがどのように廃止されるかにも注目が集まりますが、こちらも明確に内容が示されないとなると市場の期待が下がることになります。
またトランプ政権はおそらく「FRB」の理事の空席枠に新たな人材を送り込み早期の利上げを阻止してくることも容易に考えられることから、NYダウの異常とも思える期待感からの上昇とは裏腹にドル円は下落方向に向かうリスクについて相当意識せざるを得なくなってきています。
既に現状でも114円すらかなり遠くなりつつありますし、既に112.600円を割り23日NYタイムの終り値でも112.850円という重要なポイントを下回って終了していることをあわせてみるとどうもここからは下値を再度追いに行きそうな、嫌な動きになりつつあります。
これまで決定的な材料があるわけではなかったことからレンジ相場が継続するものとみられてきましたが、動き次第では相場のレンジがさらに下がるリスクも高まりつつあります。
ドル円は上方向ではなくなった?
年度末も近いわけですから、本来少しはドル円も上昇してしかるべきかと思っていましたが、足元の動きは結構不穏な状況になってきています。
下落方向といってもここから100円を下回るほどするする下落するとは到底思えませんが、まずは111.500円レベルを試し、ここが抜けてしまいますとさらに110円を下回る方向を試す可能性も捨てきれなくなってきてしまっています。
またムニューチンの口からドル高懸念が出始めていることを考えますと、ドル円についてもなんらかのけん制発言が出るリスクも考えておかなくてはなりません。期待先行だけで買われてきた相場はかなり危険な雰囲気になってきています。
先入観をもたずに柔軟に対応が肝心
こうなると28日の演説はあまり一方的な方向に動くことに期待しておかないほうがよさそうな状況で、場合によっては想定外の失望売りが登場することにも備える必要がありそうです。
またここでも毎回ご紹介しております月足の20ヶ月移動平均線は現在113.220円にあり、月末にこれを超えて終わるかどうかがかなり微妙な状況です。
ちょうど月末にもかかるタイミングであることから3月に入ると大きな相場の転換期になることも想定しておく必要がありそうです。ここへきて相場は想像以上に難しい局面を迎えているようです。
(この記事を書いた人:今市太郎)