年明けドル円はすっかり上昇迫力を欠く展開となってしまいましたが、米国の株式市場は依然としてトランプ政権への政策期待が高く、NYダウは連日高値更新が続く状況になってきています。
例年この時期は株価が上伸しやすいタイミングではありますが、果たしてたいした調整もないままにこの動きがいつまで続くのかが気になるところです。
株が大きく崩れるようなことになれば少なからず為替にも影響が出るだけに無関心ではいられない状況になりつつあります。
2月28日のトランプ議会証言までは少なくとも継続か
出展 Kabutan
本来2月6日は登場予定であった予算教書がまだ詳細開示されていないことや閣僚の承認がすべて終わっていないことなどからトランプ政権は本格的にスタートしておらず、結果として失望も生まれない不思議なモラトリアム期間を経過しているようにも見えますが、2月28日にはトランプ大統領の議会証言が予定されていることから少なくとも今月一杯はこの調子が続くものと思われます。
しかしダウは2万ドルをつけてからはかなり急激な上昇を継続中で、相場の末期大幅下落する前に走り始める感覚に近い印象もうかがえる状況です。
だれかが下落を意識しているうちは概して下落などしないものですが、ここからさらに一気に走り始めたときがかなりの注意時期になりそうで、ドル円は上昇にはついていかなくても下落に巻き込まれるリスクは考えておく必要がありそうです。
FRBの利上げ前倒しが進めば下落のタイミングも早まる可能性
上下両院の議会証言で異例とも思えるタカ派発言を行った「イエレン議長」でしたが、その後米国債の金利は確実に上昇が続く状況となってきています。
3月にも利上げを前倒し実施した場合には、その直後ではないにせよ株式市場がこれまで同様の上昇を果たすかどうかはかなり怪しくなりますし、企業の収益にも影響が出始めることは間違いがない状況です。
とくに為替の視点から注意をしておくとすれば米国の10年債金利が年利で3%を超え始めると確実に相場は変調をきたすことになると予想されていますので、今は金利の上昇はドル円の上昇のパラメータとして見ているかたがほとんどであろうと思いますが、ここからは株や為替の下落の引き金指標として気にする必要がでてきます。
為替は政治的な色彩の強いものですから金利差ができても通貨高にはならないというケースは過去にもありましたが、株と債券金利の関係では決してそうしたイレギュラーな状況は長く続かないのがこれまでにも見られており、必ずまともな状態に戻ろうとするタイミングがやってくるものと思われます。
FRBと共和党には親和性がない?
ところで上院についで会員の金融サービス委員会で証言をおこなった「イエレン議長」は共和党議員からかなり厳しい質問を浴びせられるかたちとなりました。
共和党のヘンサーリング議長はゼロ金利や、膨らんだ「FRB」のバランスシートが、健全な経済につながると裏付ける材料はまったく存在しないと指摘し「FRB」が政策ルールを無視した場合に、議会が金利政策を監視するなどの規制改革を計画するなど、これまでの議会証言にはみられなかったような発言も飛び出しはじめており、トランプとの関係もさることながら「FRB」が共和党とどこまで親和性があるのか疑いたくなるような発言も飛び出しはじめています。
もっともイエレン議長も黙ってはおらず、中銀の独立性が脅かされると反対の立場を表明し、そうした方策は、景気悪化をもたらすと食い下がっています。
2018年2月の任期終了まであと1年あまりですから、簡単には辞めずに徹底抗戦するつもりなのかもしれませんが、贔屓目に見ても「イエレン議長」と共和党に親和性があるとは思えない状況で、このあたりの不協和音が「FRB」の政策にもたらすリスクについても気にしておく必要がありそうです。
市場は依然としてトランプ政権に強い期待を示していますが、この賞味期限がいつ切れるのかが徐々に気になり始めている相場状況です。
(この記事を書いた人:今市太郎)