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日米首脳会談後一旦為替市場はテーマを失った感がありましたが、ヴァレンタインデーに登場した「イエレン議長」の議会証言はいつになくタカ派的で、年に4回の利上げを示唆しても1回上げるのが精一杯であった2016年のチキン采配とは大きく異なる利上げ姿勢を覗かせることとなりました。
史上最高値を更新中の米国株価のサポートに加え、完全雇用、最低賃金上昇と、これだけの材料がそろっていていつ利上げするの？今でしょというどこかの予備校の先生の口癖をそのまま持ち出してきた感のある「イエレン議長」ですが、果たしてこの前倒し利上げに株式市場が耐えられるのかどうかが大きな疑問点となります。
ただ、「イエレン議長」は相変わらず利上げ時期と回数については明確な答えを示しておらず、利上げには前向きなもののいつ上げるといったことで言質をとられないように十分配慮していることもうかがわれます。
FRBが株価暴落の引き金を引く可能性は十分にある
足もとの相場はまたしてもいいろころ取りをはじめており、ウォールストリートが高い期待を示している減税策の登場もあって「イエレン」発言を受けてもNYダウが大きく下落することもなく、10年債利回りは上昇に転じるといういいところ取りを再度スタートさせています。
しかしこの金利が3%を超えてくるようなことがあれば株価が今の上昇水準を維持できるとは到底思えず相場がまともな状況に戻れば株価から崩れだす可能性は十分に意識しておく必要がありそうです。
金利の上昇の株式市場に対する影響はここへ来て過小消化されがちですが、過去の実績から見ますと金利上昇は確実に企業収益を奪う結果となっており、また米国企業の自社株買いも限りなく「ゼロ金利」に近い環境だからこそ進んできたもので、これが本格的な利上げへとシフトすることになれば株式市場が何の影響も受けないまま上昇を継続していくとはなかなか思えないものがあります。
ただFRBに異変が起こる事態も
ところで足もとではタルーロ理事が任期を残しながら辞任することが明らかにされており、都合3名の理事が欠員となりますので、トランプ政権の意向を反映した新たな理事が最大3名「FRB」に送り込まれることになることが決定的となりました。
したがってここからの利上げタイミングはトランプ政権の意向も色濃く反映される展開が考えられ、「イエレン議長」の采配だけで利上げスピードを速めることができるのかどうかはかなり不透明化しつつあるともいえます。
このコラムでも何度か書いていますが、トランプ政権のスタートは史上最大の株価水準に、完全雇用、低金利からの上昇スタート局面ということで、どのような政策をとってもレーガン政権時のようにプラスに働く効果覿面のものというものはなかなか現れないのが現実のものになろうとしています。
特に「インフラ」投資や減税というものは大統領令だけで決められるものではありませんから、こうした状況で利上げだけ急いでしまいますと経済が失速しかねないのはトランプ政権の運営スタッフも十分に理解していると見られることから、あえて利上げを急がない方向に修正をかけてくる可能性も捨て切れません。
トランプの政策とともに「FRB」のここからの動きは為替相場の先行きを占う上でもかなり注視しておく必要がありそうです。歴代「FRB」議長はその政策実行によりかなり厳しい市場の洗礼を受けてきていますが、「イエレン議長」はとにかく市場とのコンセンサスを重視して思い切った政策を打ってこなかったことからまだ相場の下落といった洗礼を一度も受けずにここまできています。
しかしここからの妙な楽観視の姿勢がとんでもないものの引き金を引くリスクはかなり高い状況であることは常に意識しておきたいところです。
（この記事を書いた人：今市太郎）
