週明けの為替市場は日米首脳会談を無事通過してほっと一安心したことから、若干ながら窓空けで上昇したところからスタートし、東京タイムではさすがに買い戻しが入る展開となりました。
しかし、それも長くは続かず、朝9時15分に114.164円をつけてからは114円台を維持できず113円台後半に下落し、その後かなり長くもみあいを続けましたが、結局大きく下がりはじめ、午後5時のロンドンタイム初頭に113.437円まで下落する動きとなってしまいました。
その後はNYタイム、日本時間の午前0時半すぎに114円台まで回復していますが、また下落するといった展開で、事実上日米首脳会談の結果を好感したのは本邦勢だけであったというけっこう厳しい結果となっています。
海外からは首脳会談の結果はさして評価されていない?
特別為替のことについても、けちをつけられなかったことに本邦勢は胸をなでおろす状況になった今回の首脳会談ですが、国内メディアが首相の姿勢を高く評価した割には海外ではどうやらたいした話題にはなっていないようで、貢物をもって参上しゴルフと会食で歓待してもらっただけ、実務協議はこれからというかなり素っ気無い評価に終わっていることが相場を見ているとよくわかります。
本来市場評価がより高いものであれば、もっと買い戻されてもよかったはずのドル円相場ですが、かなり戻りも限定的であったことを考えますとここから115円方向に戻るためには相当な材料を必要とすることになりそうで、依然として下方向のリスクを抱えたレンジ相場の様相を強めていることがわかります。
2月はまだ半月残されているわけですが、毎回ご紹介しています月足の20ヶ月移動平均線は足もとでは113.265円付近にあり、日米首脳会談を経てぎりぎりこの上を相場が動いていますので、このままで行けば3月以降は依然下げたところは買いで入る相場になりそうな状況になってきています。
世耕弘成経済産業相のカウンターパートはウィルバー・ロス
国内ではほとんど大きく報道されませんでしたが、今回世耕弘成経済産業相は安倍総理に同行して訪米するのを取りやめています。
これは米国サイドからカウンターパートとして指定されたウィルバー・ロス商務長官と別個に会談するためで、今後麻生副総理もペンス副大統領と会談を行っており、細かい注文が次々登場するのは結局これからで、具体的協議にあたってはなんら予断を許さない状況は今も続いていることがわかります。
特にウィルバー・ロスは対中強硬派として知られるピーター・ナヴァロ氏とともに貿易赤字解消・強攻策で税収を240兆円あまり増加させる青写真を書いている人間であり、トランプ安倍の関係がよくてもなんらその方針に影響を与えないであろうことは多くの市場関係者が既に認識している点も首脳会談の結果が相場に反映しない大きな理由になっているようです。
トランプの減税策も予告編だけでは相場上昇が維持できない
「ウォールストリート」が非常に期待している大掛かりな減税策も予告編がでて盛り上がったものの、3週間後に具体的に開示される内容が明らかにならないとさすがに買い上がりは続かないようで株式市場も落ち着いた展開になっていることがうかがえます。
またトランプ大統領はカナダのトルドー首相との会合で、近い将来、貿易に関して綿密に取り組む、貿易に関して新たなことが起こると発言したことから保護主義貿易の具体策を開示して個別に各国と協議を始めることになるのではないかといった警戒感も高まり、ドル円の上昇を阻み始めています。
ということで、特段ほかに大きな支援材料も見当たらなくなってきていることに加え、具体的な貿易政策はこれからいよいよ登場することを嫌気して日米首脳会談を経て相場が大きく上昇方向に動くと期待するのにはやはりかなり無理がある状況になってきています。今後米国が持ち出してくる政策次第ではいきなりドル円が円高方向に下落するリスクがかなり残っていることに注意が必要なようです。
(この記事を書いた人:今市太郎)