学生時代に勉強した歴史の教科書を思い出していただくと「朝貢貿易」というものを教わった記憶がよみがえります。
これは古代の中国の王朝に対する周辺諸国の貢物の献上という形態を採る一種の貿易のことで、高度な文明を誇り、強大な国力を持った国家に対し、その文明の影響を受けながら国家形成を進めた周辺の諸民族の統治者が、その統治権を認めてもらうために、使節を送り、財物や奴隷などを貢ぎ物として差し出すのがこの貿易と言われました。
その見返りとして、王号や官職を授与されていたようで日本も中国に対してしきりにこの朝貢を繰り返していた時期があったといわれます。
そしてこの21世紀、米国のトランプにいきなり為替操作国と名指しで恫喝をうけた日本は、具体的にどういうケチのつけられ方をするのかを確認する前に日米成長雇用イニシアチブなどという名称をつけて資金提供と雇用増を目指す提案をトランプに提示して事なきを得ようと必至に画策中の様子です。
米国が保護主義に走って国内で雇用を創出しようと思うのは他国の政治のことですから勝手にやってもらえばいいことですが、なぜ日本が日米共同で雇用創出に躍起にならなければならないのかはいまひとつよく判りません。
早い段階では「TPP」の効用についてトランプに再度説得を試みるはずだった”でんでん首相”こと安倍総理は、財務大臣も連れて来いと脅かされ、明らかに為替のことでつるし上げを食うことを察知したことから今回このような平成の朝貢外交に乗り出すことになったものと思われますが、この件でネットでも大炎上となってしまったのが「GPIF」による米国のインフラ投資への資金提供の問題です。
損失を繰り返す運用よりトラ様にお貸ししたほうがましか?
Photo 時事通信
日本政府が米国からの為替操作の批難にただ言い訳したのでは収まりがつかないであろうことを察知してあわてて作り出したこの不思議でおせっかいなイニチアチブプランで「GPIF」が米国のメキシコ国境の壁の資金に出資するのではないかという話しがネットに流れてからは大炎上となってしまい、なぜ「GPIF」による年金資金でアメリカの雇用を増やさなければならないのかという批難がネットを駆け巡ることになりました。
7日の国会答弁で安倍総理は総理大臣が「GPIF」に対して資金の運用方法を指示することは「法的にできない」と改めて強調してこうした報道を強く否定していますが、これまで国内の株や為替の投資にかかわってきた投資家は「GIPS」が「PKO」部隊として株の吊上げやドル円の下値での下落局面では誰に言われたのかよく判らないながらも頻繁に登場しては妙な資金投入を行ってきたことは公然の事実であり、安倍総理が米国のご機嫌とりのために何かを差し出すとなればまた「GPIF」がいいように使われてしまうのではないかと危惧するのはある意味当たり前のことともいえます。
しかし一方では、高値の日経平均の相場に買いを入れてしまったり125円近くのドル円を買い支えたりとおよそ投資になっていないような資金の投入を無闇に繰り返すよりは米国の万里の長城建設資金に貸して長期運用で3%以上の利回りをとったほうがよほど安全という見方もあるわけで、この話はなかなか複雑です。
ただ、米国がこの貿易赤字関連で狙っているのは歳入の増加であり、日本から使途自由のフリーローンの貸付ではありませんから、今回の安倍総理の主体的かつ属国的な協力の申し出がどれだけ功を奏することになるのかが非常に注目されます。
Air Force1に乗せてもらってフロリダでゴルフをして何事もなかったかのような手打ちになるのか、外側には出てこなくてもとんでもない条件を飲まされた二国間貿易協定を締結させられるのかは、まさにトラ様次第の状況になってきています。
(この記事を書いた人:今市太郎)