大統領令頻発からのトランプ政治は何がなんだかよくわからないと思われている方も多いことと思います。たしかに突然飛び出す日本の為替操作批判などを見ていますと、現象的につぎから次へと思ったことを言い散らかしているように見えます。
しかしいろいろ調べてみますと必ずしもそうではなく、側近として内閣に起用した重要人物が貿易赤字やドル高についてどうしていくか詳細のシナリオを既にもっていてやらかしていることが見えてきます。
ピーター・ナバロとウィルバーロスに大注目
トランプ大統領は今回の政権の国家通商会議トップにカリフォルニア大学の教授であるピーター・ナバロを指名しており、さらに商務長官には投資家のウィルバーロスを指名しています。
この2人はかなり強固に繋がった存在であり、昨年の大統領選挙前に共同でレポートを出して強硬な貿易政策の実現で歳入の増税分まで試算していることがわかっています。ピーターナバロは対中強硬派として知られ、米中もし戦えばというタイトルの本を出版していることでも知られています。
この人物がひとつの中国にこだわることはないなどと画策していることからトランプは台湾の蔡英文総統と電話会談したとも言われており、突発的に見えるトランプの行動もしっかりそれをサポートし助言する人物が存在していることが明らかになってきているというわけです。
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一方ウィルバーロスはトランプが1990年にアトランティックシティにオープンして大失敗したカジノリゾートの破綻で借金地獄に陥ったトランプを助け出した命の恩人として知られる存在で、トランプとは非常に近しい関係といわれています。
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この両氏がまとめたレポートによると、貿易赤字相手国に対する強硬な貿易政策を推進することで経済成長の後押しが実現できることとなり、トランプが進めようとしている大型減税の歳入減をほぼ相殺することができるとする試算まで出しているのです。
議会で減税のことが審議される前にまず貿易相手国をめぐって言いがかりをつけるところからスタートしているトランプのやり方は実はかなり戦略的で決して脈絡のないものではないことが見えてきます。
レポートの詳細によれば、向こう10年でトランプの経済計画が見込む歳入増加分約2兆4000億ドル(242兆1000億円)のうち、貿易政策の強硬化だけで4分の3ほどを創出できるとしていますから、中国、ドイツ、日本、メキシコに並行していきなり赤字解消を迫ろうとする動きの裏には歳入増加による財源確保があることがよくわかります。
トランプの大統領令も乱発につぐ乱発に見えますが、どのボタンを押すところからスタートしたほうがいいかは結構考えられているようで、一貫性のない発言に見えても実は裏側には強固なシナリオが隠されていることに注意しなくてなりません。
安倍首相の金貸してあげますのお土産はうまくいかない?
こうなると気になるのが2月10日に開催される日米首脳会談の行方という事になります。
日本サイドは日米成長雇用イニシアチブなどというわけのわからない名前をつけて4500億ドルの市場創出効果と70万人の雇用を土産にもっていくつもりのようですが、融資をとりつけることが米国の目的ではないことは明白であり、こうした提案では貿易赤字解消と円安為替操作の引き換えにはならない可能性が高まっているといえそうで、一体どのような決着がはかられるのかが非常に注目されます。
内容次第ではまたしてもドル円は大きく円高に振れるリスクもあり、今週の会談からは目が離せないことにないそうです。
トランプの言動というのは非常に刹那的で判りにくい部分を多く含んでいますが、実は結構綿密なシナリオの上で飛び出してきているものがほとんどのようで、まだまだ侮れない存在であることがわかります。
2月のドル円相場も依然として荒れ模様で方向感のはっきりしない動きが継続することになりそうです。
(この記事を書いた人:今市太郎)