本日2月1日午後から開催されるシムズ教授なる人物の講演会が市場で話題となっています。この人6年ほど前にノーベル賞を受賞した人物で物価水準の財政理論を推奨していることで知られる学者です。
まあ、本邦の個人投資家の視点でみるとまたノーベル賞学者がやってきて人の国の経済についてちっとも解決しない勝手なことを言うのかという話しになりがちですが、果たしてこのシムズ理論は役にたつものなのかどうかを簡単にみておくことにしておきたいと思います。
クリストファー・シムズ氏について
クリストファー・シムズ氏は1942年生まれで今年74歳、ハーバード大学を卒業し同校のPhdを取得しています。85年には計量経済学会の会員となりいエール大学で教授になったあとプリンストン大学に移籍し トーマス・サージェントと共にノーベル経済学賞受賞を受賞して一躍有名になった存在です。
昨年夏に米国ジャクソンホールで、ゼロ金利制約下では金融政策のみでは物価を十分にコントロールできず、財政政策が重要な機能を果たすという趣旨の講演を行い、世界的に注目を集めているというわけです。これはまさに日本のことをめがけて言っているように見えるわけですが、案の定来日して講演を行うことになっています。
シムズ理論では、「ゼロ金利」制約下では金融政策が機能しないため、財政政策と金融政策が連携するのが望ましいとされており、2%の物価目標を達成するまで、消費税率引き上げのような財政緊縮策は取るべきでないというのが彼の提言になります。
日本も2014年に消費増税がなければ「アベノミクス」はうまくいったと提言しています。最近ではあの浜田内閣官房参与がシムズ教授の話を聞いて目からウロコの状況になったと痛く感動されているようですが、またしても登場するリフレ系のノーベル賞学者が果たして日本を回復できる処方箋を出せるのかどうかが注目されているのです。
日本は過去30年で23回以上財政出動したのだが・・・
米国では国の財政出動というのは近年ではよほどのことがない限り行われなくなっているためそれなりの効果はあると言われていますが、この国に関しては既に過去30年間で23回以上財政出動は行っているわけですから、「ゼロ金利」と財政出動をセットで行えば効果抜群といったぶっつけ本番の実証実験を果たして国内でやらかして本当の効果てきめんとなるのかどうかが非常に関心を集めるところとなりそうです。
また90年代からよく言われているマンデルフレミングの法則によれば、変動相場制下で財政出動をして景気対策を行うと、「国債増発」→「金利上昇」→「自国通貨高」→「輸出減少」というようなメカニズムで、結局景気対策の効果がなくなってしまうと言われており、実は90年代の円高局面でもこの話しは頻繁に登場しています。
トランプはもちろん喜ぶことになるのでしょうが、回りまわって円高になればまたしても「デフレ」回帰のリスクがでないのか心配にもなります。
ノーベル経済学者は本当に実体経済に役立つ存在なのか?
まあノーベル賞を受賞した偉い学者様の理論についてああだこうだとコメントしても意味はないと思いますが、「アベノミクス」とやらが始まってから、やたらと米系リフレ派の偉い学者が次々日本経済について処方箋を提言してきています。
しかし、状況はちっともよくなっておらず、日銀による株価コントロールの妙な計画経済だけが継続中ということで、途中から選手交代で軌道修正をして本当にまともな方向に動いていくものなのかかなり首を傾げたくなる状況です。
とくに国内での財政出動の効果について、いまさら議論するのはかなり違和感があり、過去20年以上日本が「デフレ」から脱出できなかった事実をよりつきつめて分析する必要も感じるところです。
今回のシムズ教授の登場は果たして国内経済に光明の道を指し示してくれることになるのでしょうか?少なくとも当分この人物が国内メディアで注目を集めそうです。
(この記事を書いた人:今市太郎)