トランプ新大統領は依然として強いアメリカを振りかざしており、ややもすれば今週早速中国を為替操作の問題で槍玉にあげかねない状況で、ここからの米中の対立がかなり為替にも影響を与えることになりそうです。
すっかり立場が逆になってしまった米中の指導者発言
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20世紀後半から今世紀初頭にかけてグローバリズムを猛烈に推進したのは誰あろう米国ですから、今頃になって保護主義による「アメリカファースト」を声高に叫ばれるというのもかなり意外であり、隔世の感があることは間違いありません。
それと並行して国家主義的な囲い込みのビジネスに終始してきたはずの中国の指導者である「習近平」がダボス会議に登場して自らグローバル経済を協調する発言を行うようになったというのは、少し前では全く考えられなった時代が到来したことを強く印象付けられることとなりました。
また、現在、世界で起きている多くの問題は、決して経済のグローバル化がもたらしたものではないとした上で、中国は一貫して開放的でウィン-ウィンの地域自由貿易を貫き、排他主義に反対し、人民元を操作して貿易競争力を高める考えなど毛頭なく、ましていわんや、通貨戦争をする気などはまったくないと主張して注目を浴びることとなりました。
エキセントリックな発言と繰り返すトランプ大統領に比べると「習近平国家主席」が非常に落ち着いていてまともな存在に見えてくるから不思議ですが、ここからの米中の応酬が一体どのようになるのかが非常に注目されるところで、市場も大きな関心を示し始めています。
米国が45%の関税をかければ事実上の経済ベースの戦争開始
トランプ大統領が中国に対して45%の関税をかけることを大統領令であっさり持ち出してくるのか、脅かしながらも妥協点を探ることになるのかは足元ではまったくよくわからない状況になっています。
しかし、従前からのトランプの不動産屋商法から考えれば高い値段を吹っかけてある程度の妥協点を探る動きになりますし、なにより実業界で金儲けに長けているタフネゴシエーターばかりを政権の重要ポストにすえているわけですから、意外な着地点を見つけることになることも期待され、ここから果たしてこの米中関係がどうなるのかが為替の動きにとってもきわめて重要な材料となりそうです。
中国に高率の関税をかけることになれば、米国系企業の収益の悪化や個人消費の伸びの鈍化などが顕在化し、米国経済にとっては大きなマイナスになるというシンクタンクの試算もでてきていますから、闇雲な保護主義だけ唱えて、中国への攻撃にトランプが徹するとも思えない状況です。
しかし足元での両国のせめぎ合いは20世紀初頭なら明らかにリアルな戦争に突入してもおかしくないほどの内容となっていますから、あまり楽観視するわけにも行きません。
とくに今回ホワイトハウスの国家通商会議の委員長に指名されたカリフォルニア大学教授の「ピーター・ナヴァロ」は南シナ海や尖閣諸島を囲む第一列島線の内側の制海権を中国は握りつつあり、さらに過去の覇権戦争を振り返ると米中戦争が起きる可能性は非常に高いなどという内容を記した『米中もし戦わば戦~戦争の地政学』の著者でもあるわけです。
つまり、これらがおよそ穏やかな話しではないこともまた確かです。トランプ大統領の怖いところは中国に対する脅かしも交渉術なのか本当に脅かそうとしているのかよくわからないところで、甘く見ていると本当にやらかしかねないところがなんともリスキーな存在です。
市場もみなそれに戦々恐々としているだけにここからもトランプ発言次第で相場が大きく上下にぶれることになりそうです。
(この記事を書いた人:今市太郎)