トランプ政権が米国経済にプラスの要素をもたらすことになるのかマイナスの要素を拡大させるだけにすぎないのかについてはエコノミストの間でもかなり議論の分かれる状況となっていますが、米系ファンド勢の中にあって、トランポノミクスを肯定的に評価しはじめているのが、世界最大のヘッジファンドのCEOであるブリッジウォーターアソシエイツの「レイ・ダリオ」の存在です。
彼は昨年12月末にLinkdInに寄稿し意外にもトランプ政権を肯定的に評価する発言をはじめています。
ただ額面どおりには受け取れない部分も多く含まれており、「レイ・ダリオ」の発言真意をどのように受け止めるのかもなかなか大きな問題になりつつあります。
しかしながら賞賛内容はかなり辛らつ
「レイ・ダリオ」は上述のLindkInへの寄稿文書においてトランプ政権の誕生を以下のように語っています。
『この新政権は弱い者、生産的でないもの、社会主義者、社会主義的政策を嫌い、強い者、力のある者、利益を得ているものを敬う。利益を得ている悪者に限られた力しか与えない環境から、彼らを英雄にし大きな力を与える環境へとシフトさせようとし、おそらくそうするだろう。』と記載しているところがなとも気になるところです。
確かに肯定はしていますが、闇雲に評価しているわけではなく、悪しき新自由主義の完成をトランプが実現すると予想していることになります。
さらに『オバマ政権からトランプ政権へのシフトは、おそらく英・米・独においてマーガレット・サッチャー、ロナルド・レーガン、ヘルムート・コールが権力を得た1979-82年の社会主義者から資本主義者へのシフトよりも重大なものとなろう。』とも指摘しています。
トランプの存在が決して心地よいものでなくても投資の側面から見た場合には莫大なマネーが現金からリスク資産へと移動することを示唆しており、投資家にとっては有利になると見ていることは間違いないようです。
「ボラティリティ」が生じることが大きな利益機会となる「ヘッジファンド」にとってはある意味トランプの出現はプラスに働くと期待していることも窺い知れます。
トランプ氏で面白い4年間が訪れる?
「レイダリオ」は、トランプ氏が世界にもたらす変化は考えられている以上に大きく、面白い4年間が訪れるとも記載しています。
面白いというのが本当に額面どおり面白いのかどうかはかなり疑問ですが、トランプ政権の初期段階で減税や財政出動から算出される予想効果よりもはるかに大きなインパクトが出現すると「レイダリオ」は予想しているわけです。
しかし「レイダリオ」自身もこうした状況を決して手放しで好感しているわけではないようで、将来的にそのツケが出てくることも十分に想定しているようです。
ファンド勢の場合には「ポジショントーク」も多くなりますからどこまで額面どおりに受け取るかはなかなか難しいところもありますが、既存の政治インサイダーが取り仕切るこれまでの延長線上の政治から交渉上手、商売上手の事業家が政府を取り仕切る、かつてないほどの政治オペレーションから目を離すことができなくなるというレイダリオの指摘は傾聴に値するものともいえそうです。
ただ、こうした究極の資本主義的展開が進むとこれまでの新自由主義に反対を唱えてトランプを支持してきた層がトランプ政権の誕生でさらに不幸になるパラドキシカルな状況の示現も予想され状況はさらに辛らつなものになりそうです。
我々個人投資家もトランプ指示であれ、不支持であれ彼の繰り出すこれまでにない手法を受けてたつことが必要になるわけですから、このあたりの変化というものは敏感に感じる必要がありそうです。
まさにこの手の空気の変化を読めるかどうかがFXでも利益を享受できるかどうかの境目になってくるのではないでしょうか。
(この記事を書いた人:今市太郎)