次期米財務長官に指名されている「ゴールドマン・サックス」元幹部のスティーブン・ムニューチン氏は19日、上院委員会の承認公聴会で「ドルは世界で最も魅力的な通貨として取引されてきた。長期的には強いドルが重要だ」と主張し、これがメディアで報道されたことからドル円が大きく買い上がり日本時間の夜中2時すぎに115.618円まで上昇する場面がありました。
トランプ次期大統領が「ドルは強すぎる」と言及して市場に動揺が広がったことを受けてさっそく火消しに動いたのではないかという憶測が広がっているようですが、ここからは政権内で連日こうした発言が出るたびにドル円が上がったり下がったりする可能性が高く、かなり先が思いやられる状況です。
典型的なお友達政権で為替に対する姿勢をどう制御するのかに注目
トランプの場合非常にわかりやすいのは、敵か見方か、公平か不公平かといった単純な視点で相手を振り分けており、自分の詳しくないことは周辺におまかせという態度をとっていることから、果たして為替がトランプによるイニシアチブの領域に入るのか人任せになるのかが大いに注目されるところです。
依然として変わらない感情的な物言いが大統領になることで少しは変化するのかどうかも注目点となりますが、ここから思いつきでツイッターで為替について呟きが行われることになると、そのたびごとに側近が修正や火消しにまわるという最悪の状況が示現するとなると為替取引にはかなり影響がでることになります。
そもそもこの微妙なお友達政権で、閣僚がトランプの発言を修正したり制御したりすることができるのかどうかにも関心が集まります。
イエレン、ドラギ、経済指標により2日で3円上昇したドル円
トランプ大統領就任を控えてほとんど動かないのではないかとみられていたドル円は驚いたことに18日の朝から20日の深夜2時までの2日間たらずであれよあれよと3円近くも上昇することとなりました。
「イエレン」発言、「ECBドラギ」発言の間接的影響、さらに経済指標で115円台まで戻したドル円はムニューチンの発言でさらに上伸して115円台を回復しましたが、NYタイムの終盤には115円を維持できずに一旦下落しています。
ここまで短期間に上昇することになりますとさすがに112.547円が一旦の底だったようにも見えますが、正直なところこれで下落が終わったのかどうかはいまひとつよく判らない状況で、就任式を終えるまでは気が抜けないところです。
後からみると比較的単純そうに見える相場ですが、昨日辺りの実際の動きはかなり神経質で、売りあがって投げさせられた向きと買い上げて切らされた向きが交互に示現するという相当難しい展開となりました。
この相場で投げにも踏みにも巻き込まれたかったトレーダーの方は、よほど優秀か資金量に物を言わせてナンピンをしまくったかどちらかの状況だったのではないでしょうか。
1月は4年連続で円高の可能性大
1月はまだ10日ほど残されていますが、どうやら今年も1月は陰線引けで終わりそうで、「アベノミクス」が始まったころから4年連続して1月はドル円が弱い状況が続いています。
かなり昔のことのような気分ですが、12月3-0日の終値は116.89円ですから、ここからこのレベルまで買いあがることになるとは現状ではちょっと想定しづらい状況です。
本当は月内に120円に簡単に到達するのではないかと考えましたが、相場はそんなに甘くないことをあらためて実感させられる月になっています。
月が変わって2月から4月にむけては再びドル円の上昇が期待されるところですが、比較的幅広いレンジ相場に移行することも引き続き考えられることから、トレンドがでるのか出ないのかを見極めた上で大きなポジションをつくるように心がけたいと思います。
(この記事を書いた人:今市太郎)