市場が注目した英国メイ首相の演説内容は事前の報道のとおり、議会承認の条件つきということではあるもののハード「
BREXIT」へと舵を切ることが明確になりました。
何の法的拘束力もないのに国民投票だけを先行して行ってしまい「
BREXIT」だけ決めてさっさと退場してしまったきわめて軽率なキャメロン前首相の後を受け継いだ見かけ以上に鋼鉄の意志を持つ女・メイ首相は結局移民制限を「
BREXIT」の最大メリットとして選択する代わりにEUへのシングルマーケットアクセス権を捨てる決意を明確にしてしまいました。
市場は、議会承認の条件付に偉く安堵した模様でポンドも大きく買い戻されて終わっていますが、実際のところ、このメイ首相演説の内容ではなんら状況が改善したとは言えず、市場の妙な楽観視にクビを傾げたくなる状況といえます。
問題はこれからの交渉であり、しかもシングルマーケットへのアクセスを諦めた結果はすぐに問題として顕在化してくることが予想され、ここまではほとんど景気に影響のなかった英国経済がこのまま進めるのかどうかにも大きな関心があつまりそうです。
ハードBREXITはデメリット満載
メイ首相は英国はグローバルな地位を目指すとして自国の誇りを重んじるような威勢のいい演説を行っていましたが、今回の「BREXIT」だけ先に決めて、あとからその中身を決めるという政権政党である保守党のやり方は、どうみても問題の残るものであり、移民とのトレードオフで失うことをやむなしとしたシングルマーケットへのアクセス権の喪失がどれだけ大きな影響を受けることになるのかは、これから実際に事が進むにつれて実はかなり深刻なものであることを改めて気付かされることになりそうです。
英国がどう考えようと、シティから多くの金融機関が短期間で離脱していくことは免れない状況であり、ロンドン・シティの金融機能がどこまで崩れていくことになるのかがひとつの注目点となります。
またEU加盟27カ国との無関税貿易がなくなることも想像紙上の影響を及ぼすことになりそうで、とくに国民生活には多大な影響がでるのはもはや間違いのない状況です。
公式にはあまり語られていないことですが、メイ首相が口にした新たな貿易協定をEUとの間で締結する交渉はあくまでも英国のEU離脱が正式決定してからのことになりますから、簡単に自由貿易協定が締結されて万事安心とはいかないことが容易に予想されます。
EU自身が組織崩壊過程にのれば離脱してよかったという話に
ここからは「たられば」の話になりますが、今年EU加盟各国で実施される総選挙や大統領選挙の結果EU離脱をしかねない国が顕在化してくればEUと英国の関係にも変化が現れることになりそうです。
とくに英国に対して一貫して厳しい態度をとってきたドイツのメルケル首相自身も次の選挙で政治生命を絶たれる可能性があり、メルケル不在のドイツとなればEUとの交渉の道が急激に開ける可能性も残されているといえます。
また個別国との自由貿易協定の話も進みやすくなる可能性は残されており、英国にもまだチャンスは残されている状況にあります。
まだまだ続くポンドの下落リスク
メイ首相の今回の演説はもっぱら自国民向けのものであったのだろうと思いますが、権威づけられた言い回しとグローバルマーケットの中で英国が引き続き重要な役割を果たすのであると楽観的に発言した割には実際に政治が直面する問題は多く、EU離脱を先に決めてしまってから中身をつめるというやり口が本当にベストプラクティスなのかという問題はこれから具体的に厳しく評価されることになるものと思われます。
移民を受け入れないというのは日本と同様の島国である英国の国民にとっては非常に重要なエレメントであることも改めて認識されましたが、その一方でハード「
BREXIT」を選択したおかげでスコットランドや北アイルランドの独立問題もここから明確に顕在化することになり、ポンドはまだまだ波乱含みの展開を想定しておく必要がありそうです。