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いよいよ今週末はトランプ大統領就任式ということでここからは、毎日トラ様の思わぬ発言で相場が振らされそうな嫌な予感がしてきますが、期待や雰囲気といった不確実な要素を取り除いて足元の相場を直視してみますと、ここからの相場の方向性を大きく占う材料となるのが米国の株価の行方ということができそうです。
足元ではなぜか債券金利が上がったにも係わらず、一切崩れることのなかった米国株価が恐ろしいほどの膠着状態に入っている点が非常にきになるところです。
米国の株価が崩れれば日本株にも少なからず影響がでることになりますし、日経平均の下落はドル円の下落に繋がりやすいだけに、株価はドル円の為替にはかなり大きな影響を与えるファクターとなることは間違いありません。ということで今回は米国の株価にフォーカスしてみたいと思います。
ボリンジャーバンドが異常に収縮したNYダウ
資料 SBI証券
トランプ期待の浮かれ相場で大きく上がった株と為替ですが、年明けさらに上昇が再開かと思われたものの、ドル円は118円台中盤から上には行けず、NYダウも「CFD」などの一部先物では2万ドルを超えたものもありましたが、現物株では2万ドルに接近しながらも明確には超えることができずに現状の高値での膠着状態に入っています。
足元でのNYダウの日足のボリンジャーバンドを見てみますと、昨年11月の大統領選挙を前にして膠着状態に陥ってからトランプ期待相場が始まってバンドウォークを進めてきた相場となりましたが、直近ではまたボリンジャーバンドの幅が極端に狭くなり、かなりエネルギーが蓄積されていることがわかります。
もちろんさらなるトランプ期待で上方向に上がると期待する向きが多いのはわかりますが、すでに事前段階での希望的観測からの上昇はほとんど織り込んでしまっていますから、具体的な政策とそのプライオリティが明らかになってくるまでは米国株価はそう簡単に上昇しないことが予想されます。
むしろここからスタートする企業決算ではドル高の影響がでる可能性がありますし、利上げの影響が企業収益にネガティブなインパクトを与えるリスクも高まります。
オバマ政権がスタートした2009年1月20日でさえ、就任演説は熱狂的な支持を得たにも係わらず、当日の株価は5%以上下げるという厳しい展開になっており、株式相場は期待だけでは上がらないことをしっかり示しています。
20%程度の下落調整はいつ起きてもおかしくない状況
資料 Bloomberg
米国株価は2008年の「リーマンショック」以来既に8年を経過し9年目に突入していますから、大暴落とはいかなくても日常的に20%程度の調整局面をいつ迎えてもおかしくない状況下にあります。
既に利上げも2015年末以来2回となっていますから、今年都合3回の利上げが行われることになれば間違いなく株価が金利上昇に耐え切れなくなる時期がやってくることになりそうです。
とくにNYダウの1万9000ドルから2万ドルに接近するまでの上昇は、ほとんどさしたる根拠のない上昇でしたから応分の調整が入ってもまったくおかしくない状態で、トランプ政策の現実が見え始めるにつれて相場が我にかえって逆戻りすることも十分に考えられます。
昨年12月15日に向けて大きく上昇した米国10年債金利は、足元では一旦上昇が止んでおり2.3%台で推移していることからドル円も金利上昇が支えになってさらに上伸するというタイミングを失っています。
したがってむしろ米国株価が崩れることに巻き込まれてドル安に動くリスクを考えておく必要がありそうで、トランプ大統領の政策が具体的に現れていく段階で、失望から相場が崩れることも常に意識しておかねくてはならなさそうです。
政権発足後100日程度はほとんど無風の期間が続いてきたのがこれまでの相場でしたが、今回のトランプ政権ではこうしたハネムーン期間が本当に示現するかどうかもよく判らない状況ですから、想像以上に早く調整がくる危険性には十分な注意が必要になりそうです。
ドル円単体で見ても113.78円レベルまでの下押しは年末17.4円もの短期的上昇を果たした調整としてはまだまだ押しが少ない状況ですから最低112円程度までは一旦下落が加速してもなんらおかしくないところにあります。
果たしてそれがいつになるのかを占う上でも米国の株価動向に気をつけておきたいところです。
(この記事を書いた人:今市太郎)