大統領就任が決定して以来、意外にまともな人物であると言う話がかなり強まったトランプですが、その就任が近づくにつれて、選挙戦のときにみられた危なげな言動がいよいよ顕在化しつつあり、勝手な期待で爆騰してきた株も為替もこのまますっきり上昇を続けるかどうかかなり危うくなりつつあるようです。
まあなんとか年明け1月7日の週ぐらいまでは、上昇を継続することができたとしてもそこから先はよく判らないというのが率直な印象です。
減税に着手しようとする下院に最高裁判事の問題が浮上
もともと共和党ではトランプの減税案とは別に下敷きになるような減税の素案をもっていただけに、今回トランプがそれに近づけるような形で減税案をまとめるように指示していけば意外に簡単に減税が実現するのではないかと言われてきました。
しかしここへきて空席になっている最高裁判事の任命問題を先に決着すべきなのではないかという話が持ちあがってきており、税制改革よりも先にこの判事のことで民主・共和党で対決する話になれば当然減税の話が遅れることになることから、一気に相場がこうした状況を嫌気する可能性もでてきはじめているのです。
これは相場にとっては結構大きな痛手になる材料であり、ここからの動きに注目すべきものといえます。なにより個人投資家は税制改革を期待して株を売らずに年越ししようとしていますから、これが裏切られると一斉に売り込まれる危険性も高まっているといえます。
中国との対立がいきなり激化する危険性
12月に入ってトランプが台湾の蔡英文総統との電話会議をきっかけとして、中国と米国との関係がかなりギクシャクし始めています。
ひとつの中国に対する考え方をトランプが覆すかもしれないといった発言をしてからドローンの潜水艇が拿捕されてしまったり、為替操作国の問題が再燃しはじめており米国が本当に中国に通商関係で制裁を加え始めるようなまさかの事態になりますと、当然中国もなんらかの仕返しをしてくることになり、米国債の大量売却や人民元の大幅切り下げといった経済戦争をしかけてくれば2015年8月にいきなり食らった中国起因のフラッシュクラッシュの再来もありえない話ではなくなりつつあります。
なにより中国製品に関税をかけるような話になれば、米国自体の「GDP」が大きく減少するというシンクタンクのレポートも登場しており、このあたりで強引な動きをするのはかなり危険な状況になってきています。
核戦力増強も示唆
トランプはここへ来て核戦力の増強も示唆する発言をはじめていますが、23日にこの発言について説明を求められ、「軍拡競争が起こるなら起こればいい、米国は勝つ」と述べており、仲がいいと言われていたプーチンのロシアもけん制しはじめています。
トランプ氏から大統領報道官に指名されたショーン・スパイサー氏は複数のテレビ番組に出演し、次期大統領はロシアや中国など他国が核戦力の増強に動かないよう確実にするとし、軍拡競争は起こらないと述べ、就任前から火消しに躍起の状況です。
既に繰り出され始めているこうした危ない言動がかなり練られた戦略的なものであれば問題ないのかもしれませんが、売り言葉に買い言葉のような世界で1月後半からこの国の政治が展開していくことになるのであれば為替に限らず株式市場もこれまでにないリスクに直面しながら売買を進めることになり、相当な注意が必要になりそうです。
とりあえず年末相場はそんなことはお構いなしにNYダウ2万ドルを目指しにいくのだろうと思いますが、ドル円がそれに追随するように120円台に上伸しても、ここからは簡単に相場についていくことができない時期にさしかかっているようで、トランプ政権誕生を睨んだ相場の動きの変化に注目していきたいと思います。
(この記事を書いた人:今市太郎)