今年の為替相場はぎりぎりまで何が起こるかわからない展開となっていますが、これまでの市場を振り返ってみると非常に象徴的な出来事となったのは、いわゆる相場のプロと言われる国内外のエコノミスト、アナリストの類が悉く市場予測をはずしてしまったということです。
とくにFX市場では元インターバンクディーラーという肩書きの人たちがアナリストとしてFX業者のセミナーやコラムなどに多数登場していますが、こちらも予測を大きく外す輩が続出しており、相場のプロと呼ばれる人たちが過去の経験から相場見込みを語っているに過ぎず、いかに目利きでないかがあらためてばれてしまった年だったといえそうです。こうした背景にはいくつかの理由があげられます。
ビッグデータの活用がまったくされない海外の選挙戦
今年は英国、米国と選挙がらみで大きく相場が動く機会がありましたが、この予測については悉く相場のプロの見立てが外れることとなってしまいました。
日本では既に総選挙にかなり「ビッグデータ」が利用されるようになっており、各選挙区における当落予想の精度は想像以上に高く、選挙が終わってからの開票速報でも予想確率はことのほか高い状況が作り出されています。
しかし、英国のEU離脱投票をみていますとこうした精度がまったく保たれておらず、賭け屋のオッズが金がかかっているだけに信憑性が高いなどと言うかなりマユツバな予想が真剣にメディアに取り上げられてしまったことが大変な悲劇を生む結果になってしまいました。
また米国の大統領選挙もしかりで、予想外という言葉が飛び交いましたが、そもそもクリントンを支持したところから報道を作り出しているCNNやニューヨークタイムスの選挙見込みはバイアスがかかりすぎて何の信憑性もなかったことが改めて浮き彫りになってしまいました。
最近ではSNSで取り上げられるニュースの嘘が問題になっていますが、米国のレガシーなメディアの報道も相当いかがわしく、問題であることが改めて認識されることとなりました。
トランプ勝利時のプロの相場予測はほぼ全滅
どちらの候補者が勝つか勝たないかはアナリストやエコノミストといえども明確に当てることはできないでしょうから100歩譲って、どちらの候補が勝つと市場がどうなるかという予測についてフォーカスしてみますと、少なくとも国内でメディアに登場するエコノミスト、アナリスト、インターバンク経験者のトランプ勝利後の市場予測はほぼ全滅の状況となっています。
たしかに選挙活動時から存在自体がリスキーといわれたトランプのことですから、その勝利で市場がリスクオフに傾くであろうということは素人でも想像のつくことでしたが、実際にはトランプ勝利ではドルも株も全く下がることはなく、債券だけがとめどもなく売られる展開となり相場のプロの市場予測などがいかに当たらないものかだけが浮き彫りにされてしまいました。
結局自分で確信できるタイミングに売買するしかない
個人投資家というのは私も含めて自分で判断できないと人の意見や予測にどうしても頼ろうとすることが多くなるわけですが、相場を100%当てられる人間などいないのが現実で、誰かの予想をそのまま信用して売買したところで、利益確保の確率はなんら上がらないことを改めて認識する必要があることを肝に銘じられた一年となりました。
人の意見をいろいろ聞いても確信がもてないときには売買はしないのが原則ですし、いつも見ているチャートから読み取れるものがあるときは、それにもっとも信頼を置いたほうが失敗しても納得のいくものになることとも改めて痛感させられました。
クルマの運転と同じで、いくら助手席の人間にアドバイスをもらってもアクセルとブレーキを操作しているのは自分ですから、まさに自己判断が常に求められるということです。
たとえば11月9日の大統領選の開票結果を見ながら相場をチェックしていれば、トランプ勝利の報道がでたのに相場がまったく下がらなくなり戻り始めたことは、チャートを見ていれば誰でも気づいたはずです。結果がでるまでは売買しなければ少なくとも売りで入って損を出すことはなくて済んだものと思われますし、その後の戻りも迂闊な戻り売りをせずに相場についていくことができれば大きく利益を上げられたはずです。
どこかにトランプ勝利なら相場は売られるはずという先入観が余分な取引をさせる原因になったことは間違いありません。
ファンダメンタルズというのは知っていれば役には立ちますが、それだけではFXで利益を出すことはできません。この部分をどう理解するかがこれからの取引では非常に重要になるということ感じさせられた1年でした。
(この記事を書いた人:今市太郎)